スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

懺悔

気がつくと私は寝ていた。どこで寝ているのかは定かではない。場所を確認しようと必死に目を開けようとするが、私のまぶたが開くことを拒否する。では、せめて手足を動かそうと思ったのだけど、どういうわけかピクリとも動かない。これは、金縛りみたいなものか。体の一部の血流が悪化したらしくちょっと動かしてコリをほぐしたいのだけどそれもままならないのは想像以上に苦しい。焦る気持ちを必死に落ち着かせつつこの不快極まる状況から抜け出す方策を考えてみた。すると、聞きなれたご主人様のお声が耳に飛び込んできた。
「すると、副会長はいじめはいじめられる方に問題があるといいたいわけ?」
「いえ、そうは言いません。いじめは絶対悪です。条件があれば許されるものではありません。」
「でも、あんたさっきそんな言い方してたじゃない。」

sumire58_001.jpg

どうやら、お嬢様と福山さんが一恋ちゃんのいじめの件で意見交換をしているようだ。二人のお声が聞こえるということは、私の聴覚は生きているらしい。

「そうは申しません。ただ、この学校の風土を考えると一恋ちゃんがいじめを受ける条件が不運なことに多いと指摘しただけです。」
「・・・」
「第一に貴族の方は民衆の方に比べ格段に合格しやすいです。これは、一般学生の妬みをかう土壌になります。第二に、貴族は魔法が使えるからという理由で専門の受験が免除されていますが、その肝心の魔法が一恋ちゃんの場合インパクトにかけます。第三に、一般教養でも彼女の成績は悪いです。」
「・・・」
「一専多能を教育目標に掲げる本学にとって、一般の学生の目には、彼女の存在が異質なものと写ったとしても不思議ではありませんね。」

直接的な言い方こそ避けているものの、福山さんはどうやら自主的に一恋ちゃんが学校を去りたくなるような雰囲気を醸成させったいのかもしれない。強制ではなく、あくまで合法的に。

「ようは、こういうこと? あなたには彼女を守る意思がないと?」
「ふううう・・・」
寂しげなため息?をつく姫宮さん。
「私だって、」
「え?」
「私だって、この学校に来るまでは理想がありました。私の力でみんなで仲良く切磋琢磨しながら成長できるような、そんな学園にしたいなって。でも、この学園の慣習にそまり曲がらずにまっすぐ頑張ってきた結果、少しづつ少しづつ正義感が蚕食されて他人の痛みに鈍感になり今の私が形成されました。それは認めます。」
「あんたねえ、そういうのを開き直りというのよ?あなたは自分の意思を放棄し、なにか問題があれば学校の慣習のせいにして逃げているだけじゃない?」
「かもしれませんね。」
「卑怯だよ?」
「ええ、卑怯です。でも、この程度には卑怯にならないとこの先やっていけませんよ?正義の味方の姫宮さん?」
「私はいつだって私であり続けるわ。いままでも。これからも、ね。」

ふむ、お嬢様はかっこいいセリフをおっしゃっている。あたりにお嬢様のお好きないちごの匂いがかすかにするので、私が寝ているお部屋はお嬢様の部屋のようだ。嗅覚復活!さて、お嬢様のかっこよさに福山さんはどう反応するか。

「どうか、」
「え?」
「どうか、この先何があってもその気持ちを忘れないで欲しいです。」

福山さんがどのような表情をしているのか、目が開けない私の知るところではない。ただ、私たちはしがらみの中に生きているのであって楽園に生きているわけではない。多少卑怯なことやずるいこともやらなければ生きていけないこともあろう。ある意味、大人になるとは、そういった卑怯さやずるさに鈍感になることなのかもしれない。
それでも、いやだからこそ、大人は、若者特有の青臭さ潔癖さにあこがれが強まるのかもしれない。福山さんの心境を私なりに代弁するとこんな感じになろうか。

「ふん、言われなくても私は正義を貫くよ」
「クス」
「はああ!? 今笑ったでしょう?」
「いえいえ、あまりにも可愛らしいのでつい。」
「可愛い?正義を貫くのが?」
「姫宮様は、正義は絶対的なもので一つしかないとお考えのようで。その考え方が子供っぽくて可愛いなあと。」
「あんたねえ。私だって世の中には色々な正義があることぐらい知ってるよ。でも、少なくともいじめを是とする正義は寡聞にして知らないよ。」
「まあ、確かにいじめは絶対悪と言ったのは私ですよね。でも、加害者には正当な処罰がくだされたのでもういいじゃありませんか?」
「小遣い一ヶ月カットじゃ、甘すぎるよ。」
「処分が甘いのではないかというご意見があることは知っていますよ。でもね、甘い処分でも正式な処分です。履歴に傷がつきます。いじめた生徒は、今後当然受けられる様々な便宜が受けられなくなるので、見た目以上に実は厳しいのですよ? 少なくとも、エリートコースからは完全に脱線するでしょう。もっとも、もともとそんな実力には恵まれていない子のようでしたが。」
「この先、」
「え?」
「この先、万一、一恋ちゃんへのいじめが再発した場合は、暴れるからね?」
「ふう・・・ご自由に。」

二人の会話を聞いているうちに、聴覚と嗅覚は回復したものの、どうしても声を出したり体を動かしたりができなかった。正確に言うと、声を出したつもり体を動かしたつもりになっているだけで実際には身動きが取れないのだ。ものすごい焦燥感の中、二人の会話を追いかけるのはかなり疲弊した。そのせいだろうか、私はまた昏睡した。

・・・



次のページへ
スポンサーサイト

テーマ : オリジナル小説
ジャンル : 小説・文学

プロフィール

Catherinefx

Author:Catherinefx
ブラックあずにゃんさんのTwitterによる寄稿のライトノベルです。
絵:きゃさりん

とある乙女の裁量決済(ロスカット)
http://catherine2010.blog119.fc2.com/

もともとは上記ブログで紹介させていただいていたのですが、最新記事から降順では読みづらいため、こちらに読みやすくまとめてみました。

最新記事も上記ブログで読むことができます。

カテゴリ
最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
ゆーとぴあ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。