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学習計画

僭越ながら、私は、ホワイトボードにお嬢様の書いた「穴熊」の二文字を消去し、代わりに次の文字を書いた。

「学習計画」

お嬢様の目が点になった。そして、
「あんたも、私に負けないくらい意味不明で複雑な頭をしてそうだね」
とかわいそうな子を見るような目で言い放った。やばいやばい、早く説明しないと信頼を失っちゃうよ。

「ですから、いじめの原因は一恋ちゃんの学力が低いことですよね?だったら、彼女がいい成績を取れるように支援してあげればよいのじゃないでしょうか?」

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はああああ・・・と盛大なため息をついたあとお嬢様は、

「それは無理だよ。憂。いい?庶民系の学生は、三浪四浪当たり前の最難関入試を突破してきた強者ぞろいだよ。しかも、入学したあとも、成績を維持するために睡眠時間を削って頑張ってるの。頭のいい子が死ぬほど勉強している、それが庶民系生徒の平均像なのよ。そんな子達に、事実上入試が免除された貴族系の学生が勝負するのはとても難しいことなのよ。」

と、珍しく理路整然と意見を述べた。やはり、直接学園の空気を吸っている生徒の意見は重いな。

「ううむ・・・」
「私がいじめられずに済んでいるのは、他の追随を許さぬ魔法力のおかげなのだよ。憂君。」
「貴族系の学生はもっと学園内で威張っているものだと思っていましたが、」
「心の中では威張っているだろうけどね。表立って威張っているのは私か、あとは貴族でありながら入試免除特権を行使しなかった千条さんくらいでしょうねえ。」
「はあ・・・」
「私だって入学したての頃は苦労したのよん。入学のお祝いとして陛下からクラス全員に支給されるはずだったお菓子が、故意に私だけ支給されなかったことに抗議の意を表明するため、この胸に宿りし圧倒的な負の想念をクラス全員の頭に無理やりねじ込んで、」

「千条様からメールですよ!」
と、お嬢様の演説に熱が入り始めた矢先、アニメのお姉さんのような声がPCから発せられた。

「って、うぜえよ! 毎日毎日!!!」

やっぱり、千条さまからメール来てたんですね。

「お嬢様、千条様も心配してくださっているのですよ。メールも開かないのはあまりにも礼を失した行為かと。」
「心配・・・ねえ。あの女何考えてるかわかんないのよね。」
まあ、その気持ちは分かりますが。知らず知らずのうちに千条様の勢力圏に組み込まれて仕舞はしないかという危惧は確かにある。それでも、知らねーよバーカ と不穏当な返信をしたりそもそもメールを開かない行為は正当化できない。
「お嬢様。同じ高位貴族同士ではありませんか。まして、千条様は実家を遠く離れて人質同然でこの町に住んでいます。敵も多いでしょうしお寂しいのではないでしょうか。」
実際、千条様が派閥を形成した理由は権力欲だけではなく寂しさを紛らわしたかったのではないかと私は考えている。あるいはもっと切迫した事情、つまりそうでもしないといじめられるのではないかという恐怖心が大きかったのかもしれない。ともかく、文化も風土も気候も人の気質も違う異郷の地であれだけの大派閥を打ち立てたのだから並の人である筈がない。

「それは・・・」
「ここは、大貴族としての余裕を見せる時かと愚考します。」
「大貴族としての余裕?」

どうやら、お嬢様の自尊心をくすぐったらしい。ここは押しの一手だ。

「千条様はきっとお寂しいのです。遠く異郷の地に流され、身分や能力の高さで畏れられることはあっても、生身の人間としてお付き合いできる方がいないのではないでしょうか。ですから、ここはその寂しさをくんで差し上げるのがエリートお嬢様の努めかと思います。」

まあ、ちょっと強引だが、とにかくお嬢様の自尊心を満足させながら千条様との会談を実現させたいのが私の望みだ。でなきゃ、このいじめ問題は永遠に解決しないだろう。私に直接関係ないとはいえ、この問題に付き合うのはそろそろ疲れてきのだ。

「ほお、寂しい人間が私に愛を求めていると?」
ふふんっと喜色の声を出すお嬢様。もっと言って欲しいオーラをプンプンさせている。お嬢様も愛に飢えているので褒め言葉には弱いのだ。ちょっと大げさに受け取られているのが気になるが。
「そうです。でなければ毎日メールなんてしませんよ、絶対。ここは慈悲を与える時です。そう、これは善行です。神の道にかなう行為です。」
「ううん。そうかあ。これも人助けか。忙しんだけど、人助けなら仕方ないなあ。」

たかが、自分に来たメールを閲覧させるという至極当たり前の行為でも、ここまで盛り上げて差し上げねばお嬢様は動けないのだ。お嬢様のやる気スイッチは、見つけるのがとても難しい。

「まあねえ♪ 田舎貴族の娘には寛大にしてあげないとねえ♪ 私ほどの正統派大貴族の娘ともなればねえ♪」

若干、調子に乗らせ過ぎただろうか。でも、余計な発言をしてお嬢様のお気持ちが変わっては台無しだ。ここは沈黙を維持。

「ええとお、うげ、10通以上!?」

そのあとお嬢様をなだめながらなんとかすべてのメールに目を通していただいた。千条様はとても几帳面な方でいじめ問題のその後の推移について事細かに報告されていた。 で、要点だけホワイトボードにまとめると、

①当初、千条はいじめ加害者二名による姫宮キャサリンへの賠償要求を逆手に取り、いくばくかのお金を加害者側に渡すことで恐喝罪の成立を計るも、姫宮キャサリンの穏当ならざる返信により断念。

「お嬢様の 知らねーよ バーカ(´・д・`) という返信の話ですね。」
「あいつ、やっぱりロクなこと考えてなかった。」
「ええ。ですが、もしこの時点でお嬢様の支払い義務のないお金が加害者側に渡れば、恐喝罪が成立。」
「ああ、言いたいことはわかるよ。見せしめ効果は大きいだろうね。加害者二名は社会的に抹殺されたでしょうし。千条さんに逆らうと痛い目をみるぞってね。」
「少なくとも、生徒会のベーシックインカムの一ヶ月停止よりは重いですよね。しかも、私刑にもならなりえませんし。」
「でもね、憂。これじゃあ私が馬鹿みたいじゃない。まるで筋の通らない脅迫にビビってお金を払ったマヌケ女だよ。」

そうだ、もしこの千条様の戦略がうまくいったとしても、お嬢様の名誉が傷つくことになっていた。もちろん、姫宮家としては断固受け入れられない戦略だ。

②生徒会側の甘い処分により、増長した庶民系生徒によるいじめが横行。これを受けて、貴族派学生の不満が高まる。

「お嬢様。これはどういうことですか?」
「わからない。」
相変わらず、周囲に関心を持たない御主人様だ。
「でも、同じ貴族の学生が公然といじめられていれば腹も立つよ。」

言われてみればそうだ。

③貴族派学生の中で、水面下で自主的な会合が開かれるようになる。いじめ問題が、身分閒闘争の色彩を帯びるようになる。

「お嬢様、だいぶこじれてるじゃないですか。」
「ううん、身分間闘争になると厄介ね。好むと好まざるとにかかわらずいじめに関係ない人も、身分間の争いという文脈で巻き込まれることになるし。」

④由納辺境伯の下で結集した貴族派学生が対応策を協議。その結果出された戦略案を最有力貴族の千条と姫宮の二者に提案。←イマココ

「って、もう私、まきこまれてるじゃん!!!」

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・・・



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Author:Catherinefx
ブラックあずにゃんさんのTwitterによる寄稿のライトノベルです。
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もともとは上記ブログで紹介させていただいていたのですが、最新記事から降順では読みづらいため、こちらに読みやすくまとめてみました。

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