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ファイ・XF・うらら

私の話をしましょう。

私の名前、ファイ・XF・うらら
私の現在の身分、学生。前生徒会役員選挙第二位当選者。生徒会書記を努めている。敷衍すると、陛下直属の諮問研究機関にあたる枢密学校の運営に関わる立場なので、公的な権力もある。


研究分野、人道兵器の開発。枢密学校入学後、国際法で禁止されている、戦争での銃火器類の使用禁止に抵触しない新型兵器の研究に着手。結果、貴族の能力である魔法を弾丸に装填するテクノロジーの開発に成功し、条約問題をクリア。先の戦争(第二次北方征伐)では面白いように敵(=千条家)を無力化させた。

私の関心は研究開発。武器商人でも、政治家でもない。私の技術がどこに売られなんに使われたかは私の知ったことじゃない。目下の悩みは、臨時に入った莫大なお金の使い道。炊飯器、掃除機、洗濯機を新しく買い換えてから、何にお金を使えばいいのかさっぱり。

年齢16歳。性別、女。身長、150センチ。髪の色、シルバー。月の光に照らされとキラキラと粒子が舞うように光る。その姿があまりにも幻想的なので「月の姫君」などと呼ばれることもある。

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好きな食べ物、なし。というか好き嫌いがない。なんでも美味しくいただく。でも、あえていうなら、熱々のパンケーキにメイプルシロップのたっぷりのったおやつが好き。

「ふう、こんなかんじかしらね。」
うつろう意識の中で、いや、はっきりいえば夢の中であるが、私が考えていたことはほかならぬ私のことだった。
「ちょっと、眠ってしまったわ。唇、乾いちゃってる。」
カップに残っているはずの紅茶を一気に飲み干そうとするが、カップの中には一滴の紅茶も残っていなかった。ささやかなアンラッキーに、おもわずため息が出てしまう。
「あいり、あいりはいる? 紅茶を淹れて頂戴。」
「あ、はい。うららお姉さま。ただいまお持ちいたします。」

私が、たった今呼んだ女の子の正式な名前は、福山あいり生徒会長。前生徒会役員選挙第四位当選者。現在の枢密学校を牛耳る実力者、生徒会副会長福山みゆきの妹である。彼女は、ピンク色の長い髪を束ねることなく自然に垂らしている。

ちなみに、あいりは私のことをお姉さまと呼んでいるが、これは親しみを込めて言っているだけ。本当の姉妹じゃない。お返しに、というわけでもないが、私も、親しみを込めて彼女のことは名前を呼び捨てにしている。

うーん・・・。お茶菓子になりうるものがいっぱいありすぎて困っちゃうな。私の研究が世間で認められてから、陸軍、政商、武器商人、出版社、とにかく色々な方が訪問に訪れ、お茶菓子をおいていくものだから。初めのうちこそ、高級銘菓がお腹いっぱい食べられて、幸せいっぱいお腹いっぱいだったけど、流石にカロリー過剰摂取になった。はっきりいって、健康に悪い。かといって、このまま腐せるのももったいない。

「お姉さま、紅茶がはいりましたよ。」
「ああ、うん、ありがとうね。あいり、いちご大福食べようか?」
「えっと、あの、あいりは、その、えと、最近体重が増えちゃってるから、その・・・」
あいりは、顔をめいいっぱいうつむかせて困惑している。彼女は極度の恥ずかしがり屋で、相手の申し出を拒絶するのが苦手。だから、私のほうが気を使わないと。
「あ、ごめん。流石に毎日おやつに付き合わせてたら、太るよね。」
「はい、ごめんなさい、です。」

・・・
どうする、この1ダースの生菓子? 食べ物を捨てるのは私の趣味じゃない。であるなら、誰かに押し付けるしかない。具体的に言えば、他の生徒会役員に配布するという手がある。

前生徒会役員選挙第一位当選者の福山みゆき生徒会副会長は、体型の維持に日々腐心している子。先日、ダイエット研究会の生徒たちと300カロリー以内で摂取できるランチについて熱く話し合っていたのが印象的。いちご大福のような高カロリー食品はまず食べない。

前生徒会役員選挙第三位当選者で、生徒会会計のアル・操さんは、ダイエットに気を使うような子じゃない。でも、神出鬼没なのが玉にキズ。最近全くエンカウントしてない。この前あったのは、あれいつだっけ?

前生徒会役員選挙第五位当選者で、生徒会庶務の羽柴律さんは、実直で真面目な子。事情を説明すれば、喜んで協力してくれるだろう。ただ、彼女は本生徒会で唯一福山派閥に所属していない、いわば異端児。彼女は、福山さんに対立する千条派閥に所属している。陰に陽に福山派閥の支援を受けて生活している私が、例えいちご大福のようなちょっとしたお菓子でも、羽柴さんにプレゼントした、なんてニュースが広がったら、みゆきは絶対にいい顔はしないだろう。

ふむ、割と詰んでるわね、このいちご大福の運命。

あいりには今断られた。でも、彼女は押しに弱い。もう少し交渉してみよう。
「ねえ、あいり。今、私がどんなに頑張っても、二個が限界なの。でね、10個余るでしょう?そうすると、余った10個は廃棄しなきゃいけなくなるの。」
「そ、それは・・・」
そ・・・それは私の知ったことではありません。などと言えるほど、あいりは強気じゃない。あいりはとても弱気な子。今だって緊張のせいで、この子、肩で息してる。ふむ、いちいち仕草が可愛い。狙っているならあざといが、それはない。
「もったいないよね。地方では、食べたくても食べられずに飢えて死ぬ子もいるこのご時勢。絶対に許される行為ではないわ。」
「・・・」
あいりは押し黙っている。額に汗が浮かんでいる。私に押し付けられてもこまるなあと額が泣いているみたいだ。。
「もちろん、私のものを私が廃棄しても罪にはならないわ。でもやっぱり、罪だよ。Crim(犯罪)ではなくてもSin(倫理的な罪)だよ。」
「あの、あいりにどうしろと・・・?」
真綿で首を絞められるような私の尋問に耐えられなくなったのか、あいりは逆に質問してきた。だらだら攻めてないでさっさと言いたいことを言え、ということだろう。

「あいり、あなた、おうちに帰れば使用人がたくさんいるでしょう?彼女たちに配ってあげてよ。」
「それは、その、お安い御用ですが、そういう、家に関することは、お姉ちゃんの許可がないとだめっ、っていうか。」
「ああ、なるほど・・・」

どうやら、福山副会長は、学校だけではなく実家でも君臨しているらしい。超絶可愛い顔して、やってることはおっさんくさいというか。彼女は、あれもこれも全て手に入れないと不安になるタイプの女だ。実際、彼女の完璧スマイルをよく観察してみると、欲望に濁った女の目をしていてかなり怖い。この世のありとあらゆるものを貪りくらってもまだ足りないと泣き叫んでいるかのような、飢えたもののけのような目をしている。ま、私しか、気づいていないと思うけどね。

「あの、もしよかったら、上に載っているいちごを、今二人で食べちゃって、残りは冷凍保存したら、どうかな?」
そっか、なるほど。冷凍に向かない生のいちごだけ食べちゃって、自然解凍しても美味しくいただける大福は冷凍する。
「面白いじゃない!うん、それでいこう!」

かくして、上に載っているいちごを切り分け、お皿にのせ、大福はラップに包み冷凍庫に入れる作業が始まった。で、いちごは私とあいりで今いただくことになった。

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「ああ、美味しい。甘くて大きくてみずみずしくて。」
あいりは率直な感想を述べる。確かに、これは絶品だ。このいちごは地産地消もの。つまり、鮮度が高いのだ。腐りやすいいちごは、保存技術も流通経路も衰退してしまったこの時代ではその場でとれたものをその場で消費するしかない。もちろん、莫大なエネルギーを使って遠くから輸送するというテクノロジーも復活できないこともない。しかし、それはエコに反する行為だ。換言すれば地球を傷つける行為。歴代皇帝はそういう文明は否定している。まあ、最近はちょっと変わってきたけど。

「そうね、このレベルのいちごが食べられる人なんて、帝都でもそうそういないわよ。」
「まったく、私たちは甘やかされてますね。」
「そうだね、勝手にお土産を置いていってくれるお客様に感謝感謝だ。」

本当は、そんな気楽な話じゃない。彼女たちが菓子折りを持って私のところに表敬訪問に訪れるのは思惑あってのことだ。で、その各方面からの絡み合う思惑に私自身の身動きがとりにくくなりつつある今の現状を鑑みると、いちご大福ではとても割に合わない。

「ふう、お腹も膨れたし、そろそろ」
「お仕事に取り掛かりますか? では、私も失礼しますね。」

空気を読みすぎるくらい読むあいり。他人に対して気をうのは、もちろん長所ではあるけれど、度を越しすぎれば短所になる。いや、短所というのは語弊があるな。つまり、一般論として、気を使えば他者からの評価は上がるがその評価に反比例して自分が無くなっていくのだ。その自己喪失は主観的にはかなり辛い。他人に気を使い心配させたくないがゆえにいつもはにかんだ笑顔のあいり。でも、私は彼女のことが心配だ。だって、その笑顔は他人に嫌われたくないから、という後ろ向きな動機の笑顔だから。笑顔ってそういう動機で出すものじゃないでしょ?

「あいり、食器くらい私が洗うから。そのままにしておいて。」
だから、少なくとも私くらいはあまりあいりに尽くされすぎないように気をつけないと。あいりに尽くさせることは、あいりを空っぽにすることだからね。

私の言葉にやや不安そうな顔を一瞬見せるあいり。でも、私の時間を無駄にさせたくないからか、すぐに顔に笑顔を貼り付けて、パタパタと退出していった。
 
さて、地下の研究室に行こう。大きな本棚の横に設置されているパネルに9桁の暗号を入力し、私の指紋を入力する。すると、本棚が、ぱかっと真っ二つに割れて、エレベーターが現れる。

こんなことを言うと、人に見られては困る秘密の研究でも行っているのかと思われるかもしれないが、事実そうである。技術というのは、その革新がある一定レベルを超えると人々のライフスタイルまで変えてしまうことがある。換言すれば、革新的な技術というのは、世界を今までのやり方では通用しなくなる世界に上書きすることもあるのだ。そうなると、今までのやり方で生きていた人は、その存在意義を失い、新しい技術を憎み、その憎しみは技術者にぶつけられる。

私の事情に即して言えば、私の技術のせいで、それまでご飯を食べられていた人が食べられなくなるのだ。

だから、あまり人目については困るの。というか、現実問題として、命が危ない。どうして命が危うくなるかは後で説明しよう。もう、エレベーターは地下についてしまったからね。

カコンっと音を立ててエレベータが停止する。ピシャーっと音を立ててドアが開く。
私の網膜がだだっ広い射撃場を捉える。相変わらず無機質な空間だ。
そして、このミリタリーで火薬臭い空気にはまるで似つかわしくない容姿抜群の少女が出迎えてくれる。

彼女こそ、福山あいりの姉にして、現生徒会副会長、生徒会役員選挙第一位当選者の福山みゆきさんだ。

・・・



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プロフィール

Catherinefx

Author:Catherinefx
ブラックあずにゃんさんのTwitterによる寄稿のライトノベルです。
絵:きゃさりん

とある乙女の裁量決済(ロスカット)
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もともとは上記ブログで紹介させていただいていたのですが、最新記事から降順では読みづらいため、こちらに読みやすくまとめてみました。

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