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仕置き

夕日が綺麗・・・

赤々と燃えるような夕日が大地を照らしてた。
夕日が綺麗に思えるのは、その視覚的な美しさが大きいのは事実だ。

でも、それだけではないだろう。
夕日が、その美しさを保っていられるのはほんの短い時間だ。
空はすぐに漆黒の闇に侵食される。
そのはかなさが人の心をふるわせるのではないだろうか。

まるで今の私のようだわ。
私の魂も、その美しさを夜の魔王に汚され、今まさに漆黒の闇に覆われようとしていたからだ。


「で、なんのつもりなの。これ(↑)は?」
私の差し出した文書を掲げ、怖い悪い夜の魔女は言った。
私、姫宮きゃさりんは怖い悪い夜の魔女に捕らえられ、要塞の一室に幽閉されている。

「反省文を書きなさいと言われたので。姉上。」
「これが、これが反省文のつもりか?」

私の書いた玉稿を両手でプルプルと掴んでいる魔女。

「ふう・・・星がきれい。」
窓枠の外には星がきらきらと輝いていた。夜には夜の美しさがあるのね。たとえ、囚われの姫君になろうとも闇夜に無数に浮かぶ光の明滅に心を慰められることもあるわ。そう、翼なんてなくても私の心はこんなにも自由。

「姫宮家に恥をかかせた上、弁解にもならないような弁解を繰り返した挙句、仮病を使い、最後は他人に責任を押し付けました。申し訳ございません姉上。ぐらい言えないの?」

「何の話でしょう? 姉上。あれはすべて侍女がやったことです。それに流行病に罹患しているのも事実。ごほっ。」

はあああっ、と大きなため息をつきながら天を仰ぐ魔女。次の口激に備えねば。

「よく聞きなさい。きゃさりん。人の目はごまかせても神の目はごまかせませんよ。神はすべて見ています。人の業を。善いこと事も悪いことも。」
「じゃあ、神を証人としてここに呼んでください。」

「ふっざけるなーーーーーーーーーーー!!!」

魔女はその悪い本性をついに露見させた。目がかっと開かれ、その口からはすべてを焼き尽くす地獄の業火がばら撒かれ、私の清い魂を黒く汚す。

「ああ、熱いわ。胸がとても熱い。」
炎の爆風にあおられ私の体は後ろにのけぞった。魔女の背後にある掛け軸には、(蹂躙せよ!)という文字が躍っている。さすが軍人。威勢のよいご趣味をお持ちだ。そういえば、彼女が部隊に出撃を命じるときには、一言だけ「蹂躙せよ!」と訓示するらしい。楽でいいな。

「ネタはとっくに上がっているのよ。憂が全部話してくれたわよ!!」
「なっ、んですと!」

私は驚愕のあまり目が大きく開いてしまった。信じられない。あの忠実な臣下が!ショックのあまり呼吸もままならない。息苦しい。胸が、胸がとっても苦しいわ。いや、まて・・・よ。私は自らの推論に驚愕した。私と憂が今日まで培ってきた絆から判断するに憂が私に不利な証言をするはずがない。ということは、

「姉上! 憂に、憂になにをしたのですっ!」
「はっ? 何もしてはいない。人聞きの悪い。」
魔女はすっとぼけているが、私の目はごまかせない。そう、曇りなき我が眼は真実だけを照らすのだ。
「とぼけないでください! 拷問ですね? 石を抱かせたか、火であぶったか、大量の水を飲ませたかっ! なんと卑劣な!」

「あ・・・あのねえ。あなた。」
魔女は突発性の頭痛に襲われたらしく眉間にしわを寄せ片手で側頭部を庇っている。よほど痛いのか、ちょっと悲しそうな目だ。

sumire112.jpg

「衛兵!」
何を感じたのか、いきなり姉上は気になる単語を叫んだ。
・・・ていうか、衛兵ってあれだよね。兵士だよね?

「お呼びでございますか? 閣下。」
赤い胴着と弓で武装した無礼な女がノーノックで入室してきた。あとで知った話だが、姉上の呼び方しだいで部下は礼儀作法を省略するらしい。今の「衛兵!」という呼び方は礼儀はいいから早く来なさいという意味もあるようだ。

「憂を呼んできなさい。」
「ただちに!」

部下のほうも主君のそのときのスタイルにしたがって返答の礼儀作法を簡略化するそうだ。ただ、主君のそのときの気持ちをそのつど忖度するのは実務的に非常に困難。必然的に姉上の周りには姉上に長期間仕えた、愛情深くて頭の良い部下だけが残ることになる。

でも、今はそんなことよりも憂の身の安全だ。大丈夫だろうか。ひどいことされていないだろうか。考えただけで胸が痛む。

とんとんとノックの音がするまで二分かからなかった。どうやら、それほど憂とは隔離されていないようだ。

「入りなさい」

姉上が呼ぶや失礼しますといいながら憂が入室する。気のせいか普段よりも顔艶が良いように思える。
「姫子さま! 先ほどはうなぎをご馳走になりありがとうございました。いやあ、私一生に一度うなぎを食べるのが夢だったのですよ。」

姫子とは姫宮姫子、つまり我が姉のことだ。でも、今気になるのはそこじゃない。うなぎ・・・?
「はっはっはっ! これからも姫宮家のために励め励め! 今度はステーキを食べさせてやるぞ。」
快活に笑う姉う。その笑顔に目を輝かせる憂。
「ほんとですか姫子さまっ!ライスとスープも頼んでいいですかっ!?」
狂喜のあまり小躍りする憂。っていうか何この態度? これじゃあ、まるで私が普段憂に粗食を強制しているみたいじゃないっ!

「ああ。全種のパンを頼んで食べ比べをしよう。だがその前に・・・いくつかの質問に答えるのだ、憂。」
目をすっと細め、一呼吸入れる姉上。

いよいよ尋問か。でも、私と憂の絆は磐石。たとえ神の裁きが下されようと決して壊れることはないわ。私と憂が今日まで築いてきた主従の絆。打ち破れるものなら打ち破って御覧なさい。姉上!


「お茶会の招待状を作成したのは誰だ?」
「キャサリンお嬢様です!」

即答かいっ! 普通こういう場面って、一瞬だけ苦渋に満ちた表情を浮かべて、でもすぐに不敵な笑みを浮かべ、(ふっ、いえませんね。たとえこの命と引き換えにしても!)とか言うべきシーンじゃないの?

Comic01.jpg

私の正当な怒りをよそに姉上の尋問は私に向かった。
「どういうことだ?きゃさりん。 何か弁解はあるか?」
ぐぬぬ・・・
ご先祖様は言ったわ(死よりも厭うべきは不名誉と敗北である!)とね。

「あの、えと、姉上。実は、私、記憶が定かではなくて。」
「ああ! もういい!! 時間の無駄だ!!」

姉上は理不尽にも逆切れしすくっと立ち上がり私に指差し宣言した。
「二日間の断食を申し付ける!」
「あ・・・姉上!?」
「何だ気に入らないのか? だったらことの仔細を母上に申し上げて姫宮宗家より厳しい処罰を下してもらってもいいんだぞ!」
「あ・・・いえ。そのう・・・」
やばいやばいやばい。母上の耳にまで入ったら死ぬからマジで!冗談抜きで、一番甘くても断食10日はくらいそうだ。ただでさえ、私、愛されていないのに!!
「断食がんばらせていただきます!!」

「よし!終わりだ終わり!! 私も忙しい立場なんだ。 あんまり余計な仕事を増やさないでくれ!」
「はあい・・・」
ふふふ・・・なんてね? 私はおかしくて笑い出しそうな衝動を必死にこらえた。この家には憂しか侍女がいない。憂の口さえ封じてしまえば断食なんてする必要ないもんね♪

さあて、どうしてくれようか このダメイド。 たかがうなぎかステーキで私を裏切るなんて。私の信頼を裏切った罪は海よりも深く山よりも大きいわよ!ただ、口を封じるだけじゃ気がすまないわ。姫宮家伝統の修行の山まで連行して、裸にして氷室の中に閉じ込めようか。うむ、私も優しいな、これだけの仕打ちを受けてこの程度の懲罰で許してあげるなんて!

「ああ、言い忘れたけど・・・」
姉上はくるりと体を回転させて上から宣告した
「憂に逆恨みしてその身に危害をくわえたら、姫宮家伝統の修行の山に連れて行って氷室に放り込むからそのつもりで。」
「え、ちょ!?」
「何を目を丸くしている? 憂は姫宮家の財産であってあなたの財産ではないのよ? あなたに憂を傷つける権利はないの!」

くっ、ぐぬぬ、ぐぬぬぬぬ。
私は悔しさのあまり唇を噛み体を振るわせた。
「おとなしく処罰を受け入れたほうが身のためよ。」
姉上は今度こそ振り向きもせずに部屋を出て行った。

く・・・屈辱だわ。こんな仕打ちを受けるなんて。でもっ!!
私は瞬時にしてこの逆境をチャンスに変える計画を思いつき多幸感に包まれた。
そして、かっと目を見開き片手を天に突き上げ高らかに宣言した!

それはまるで佐天さんがレベルアッパーを使って能力者に成り上がったときのような高揚感であった。

「見てなさいよっ!倍返しにしてやるんだからっ!! 絶対ただで転んでやらないんだからっ!!!」

Comic02.jpg


・・・



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プロフィール

Catherinefx

Author:Catherinefx
ブラックあずにゃんさんのTwitterによる寄稿のライトノベルです。
絵:きゃさりん

とある乙女の裁量決済(ロスカット)
http://catherine2010.blog119.fc2.com/

もともとは上記ブログで紹介させていただいていたのですが、最新記事から降順では読みづらいため、こちらに読みやすくまとめてみました。

最新記事も上記ブログで読むことができます。

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