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千条派閥

・・・
気のせいだろうか、お嬢様のお部屋にいらっしゃったのは控えめに見ても10人以上はいるような気がする。四人だけの会合じゃなかったのか。ってまずいまずまずいこれはまずいぞ。お茶菓子が足りないなんてことになったら姫宮家の尊厳に関わる問題だ。足りるかなー不安だよ。

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「では、姫宮さんや菫さんにとっては初対面の人もいると思うので各自簡単に自己紹介していこう。」

嫌なことに、千条が当然のように仕切り始めている。なんだか不安になってきた。これでは間違いなく千条のペースで会議が進むだろう。お嬢様に派閥なし。菫さんは今回は千条に頼っている立場だ。

「自己紹介はいいけど、その前に質問があるわ。」
お嬢様が眉間にしわを寄せて発言する。口調にいらだちがこもっている。
「何か?」
千条が小首をかしげる。
「こんなに大勢で押しかけるなんて聞いてないんですけど。」
当然の質問をする。
「ヘルプの数は多いほうがいいだろう?ここには多種多様な人材が来ている。どこでどんな人が役に立つか分からないぞ?」
「うーん。」
そういうふうに言われると反論しづらい。いじめ問題が解決に向かうのならば別にいいのか?

自己紹介のシーンは煩雑になるのでざっくり私が要約しよう。

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まず特筆すべきは、特風委員の大野、懲罰委員の片桐、生徒会庶務の羽柴。この三人は千条の最側近のようだ。体に例えれば、千条の頭。

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次に、電脳部員の後藤、真田、明石。この三人は、千条の広報を担当。ホームページで千条派閥の日々の活動を発信しているようだ。いわば千条の口。

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また、探偵部員の毛利、吉川、小早川は盗聴・盗撮スキルに定評があるらしい。つまり情報収集を担当。いわば千条の目と耳。

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戦闘部の福島、加藤は、ボディーガードみたいなものか。身体能力が高く、格闘にもたしなんでいるという。いわば千条の腕と足。ちなみに、肉体労働ができる人材は、女性しかいないこの学園の中では重宝されるという。また、部活では、菫さんの後輩にあたるので、千条派閥とのパイプ役としても重要だろう。

驚いたな、この部屋には、千条も合わせて、12人の派閥メンバがいる。これでもまだ派閥の半分にもならないというのだ。まあもっとも、派閥メンバもいろいろな思惑があってここに来たり来なかったりで、一枚岩ではないらしいが、それはまた別の機会に話そう。

「うむ。各自自己紹介が終わったところで本題に入ろう。議事進行は、僭越ながらこの千条が引き受けよう。」
「異議なーし!!!」

さっそく千条派閥の全てのメンバが賛意を表明する。まるで、迅速かつ大きな声で賛意を示すことが忠誠の証になるとでも言わんばかりの空気だ。菫さんは若干苦笑している。茶番に付き合わされる形になったお嬢様は不機嫌そうだ。

私が思うに、いろいろな都合を各自持っている中で、千条の唐突な呼びかけで急遽集まったこのメンバは、忠誠度の比較的高い人たちと見て良いのではないだろうか。もっとも、どうしても外せない都合をもっと人もいるだろうし、たまたま何もすることがなかった人もいるだろうから、今日この時の出欠をもって判断するのは早計だが。

「では、まず手元に配布されている資料を見て欲しい。あ、もしない者がいれば遠慮なく言い給え。いいか?でははじめるぞ。この資料は菫さんが作成したいじめの記録だ。一恋さんがいじめられた日時、内容が書かれている。尚、加害者は秋山、栗林の2名。この中で、もし自分が直接目撃したいじめがあれば、チャックを付けて提出して欲しい。噂で聞いただけじゃダメだゾ?あくまでも目撃した場合だけチェックをいれてな。」

まずは事実関係の調査からか。手堅いな千条。伊達に派閥のトップをしていない。調査結果はすぐに明らかにされた。15件のいじめのうち8件については、最低一人以上の目撃者がいる。生徒数は各クラス20人×8クラス×3学年=480人。そのうちの姫宮様合わせて13人の生徒のいずれかは、15件の疑いのあるいじめについて8件はあると認定したことになる。もちろん、菫さんがすべて目撃したいじめなので、この8件については最低二人の目撃者を確保したことと同義だ。

いじめの内容は、足掛け、上履きにジャムを放り込む、机に落書きされる、教室に鍵をかけて閉じ込める、などなど悪質なものばかり。これをもって、

「以上の調査結果から、我が千条派閥では、一恋さんが秋山、栗林、両名により日常的にいじめられていることを認定する。」
「異議なし!」

「大野」
「はい。」
「特風委員として懲罰委員会にこの報告書を提出して欲しい。」
「承りました。」
「片桐」
「はい。」
「大野から報告が来るまでの閒、二人に与えるべき懲罰について熟考しておくように。」
「分かりました。」
「後藤」
「はっ!」
「大変な作業になって申し訳ないが、秋山、栗林両名の身辺を探って欲しい。後ろ盾がいないかどうかが特に気になる」
「善処します。」
「福島・加藤」
「うっす。」
「一恋さんに張り付いて彼女を守って欲しい。ただし、手荒な真似はするな。」
「了解っす!」「合点承知!」
「それから、各自、ネットの学園裏サイトを利用して今回のいじめ問題について千条が激怒しているという噂を流して欲しい。」
「分かりました!」

違和感があるとすれば、学園内では公的な資格を一切持たない千条が学園内で公的な資格のある者に命令できる点である。これがまかり通ると、学園の公的な人材を千条が自由自在に私的に利用できてしまうことになる。今だって、そうだ。教師側の怠慢と一般生徒の無関心によって卑劣ないじめがまかり通っている現状に、千条が敢然と立ち向かう。このかっこよさが幸いして、千条の行き過ぎた学園側への干渉が見えにくくなっていいる。

もちろん、お嬢様のように、いじめは絶対に悪だ、この絶対悪を取り除くのに段取りなんてどうだっていい、という考えもあるだろう。もしかしたら、千条はお嬢様とは別の意味で目的至上主義なのかもしれない。

「あの、ひとつだけよろしいでしょうか?」
「ああ、菫さん。おいてけぼりにして済まなかった。遠慮なく発言を」
「一恋は言うまでもなく心に深い傷を負っています。差し出がましいようですが、臨床心理専門の人がいれば、力になって欲しいです。」
「あ、」
千条は、うっかりしていた、といった表情で
「臨床心理専門の木下は・・・今日は欠席か。」

一専多能主義を教育目標に掲げる本学園では、高度な専門性を持たない生徒の入学は認められない。ちなみに、多能とは、主要5教科である。つまりオタク気質の専門バカも入学は許されない。高度な教養に裏打ちされた高い専門性にこそ価値があるという考えだ。

「木下さんは研究のために欠席です。」
生徒会庶務の羽柴が報告する。出欠は羽柴に報告することになっているらしい。

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(木下さんは、普段から格別に贔屓されているのに欠席するなんて・・・)といった声があちこちから聞かれるが、千条のこの会合こそプライベートなものなのだから、木下さんこそ普通の対応のはずだ。

「相分かった。一恋さんに心のケアが必要になった場合は私が担当しよう。」
「えええ~!?」
千条の意外過ぎる発言に驚きの声が複数上がる。
「心外だな。私の専門は精神医学だぞ。しかも、臨床心理とは違い薬の投薬も認められている。私以外にこの任に相応しい者はおるまい。もちろん、木下にも迷惑にならない程度に協力してもらうがな。」

「千条様が直接ケアしていただくのなら、これ以上の話はありません。」
「ほら、菫さんも安心しているではないか。これで決まりだな。」

心のケアにまで、話が進み、もうそろそろお開きになるかな、という会議の終わりを予感させる弛緩した空気が流れていたところで、お嬢様の発言が飛んだ。

「私からも一ついいですかあ、千条様あ」
貴族最高位のお嬢様が千条を様付して呼ぶ義理はないはずだが、自分を無視した会議の流れによほどムカついていたのだろう。慇懃無礼な言葉使いになっている。

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周囲の子の反応は、そういえば姫宮さんもいたっけ、とか、あーもう帰りが遅くなるじゃない、とかあまり歓迎する雰囲気じゃない。
「もちろん、姫宮さんの意見も大歓迎だ。どうか、率直なご意見を賜りたい。」
さすがに、千条は失礼のない受け答えをした。

「では、遠慮なく。もし、今日の会議の結果を大野さんが特風委員会に持ち帰ったとして、委員会は速やかに懲罰委員会に通報しますか?」
「大野、どうなんだ?」
「私は特風委員長なので、本件を優先的に議題にかけられる立場です。もっとも、第一優先事項にしてしまうと、いかにも千条派閥の意向を優先しすぎる印象を他の委員にあたえてしまうので慎重にタイミングを見極めますが、一両日中には提案します。」
「じゃあ、提案したらすぐに懲罰委員会にいじめの報告が上がるの?」
「いえ、提案後、多数決で決まります。委員は9名で構成されているので5名以上の賛成が必要です。ですが、本件の場合、菫さんの完璧な資料及び多数の証言もありますのでまず間違いなく懲罰委員会に本件は送付されるでしょう。遅くとも、今週末までには上げてしまえるでしょう。」
「今週末?意外にかかるのね。で、懲罰委員会は、速やかに懲戒手続きをを取れるのかしら?」
「片桐、説明してやれ。」
「いえ、懲戒処分は慎重に精査されます。加害者の弁解も聞かなければなりません。過去の前例を集めて、類似の事例から、懲罰の内容を決めます。最終的には多数決ですね。懲罰委員会は、私を含め常任委員4名と生徒会長、副会長、会計、書記、庶務、つまり羽柴さんですね、の合計9人で構成されます。5名以上の賛成でもって、教師側に当該生徒の懲罰手続きを勧告できます。」
「勧告できるまでどれくらいかかりそう?」
「重い懲戒処分の場合はとても慎重に行うことになるので、まあ一ヶ月は見て欲しいです。」

「おーそーすーぎーるー!」
ブチ切れるお嬢様。オーバーリアクションに天を仰いで見せる。
「そんな処分が決定されるまで恋ちゃんはいじめに耐えなきゃいけないの? だったら、私は今までどおり勝手に恋ちゃんを守るよ!」
「だから、私刑はダメですってば!」
何度、同じことを言わせるんですかといわんばかりの口調で大野が反論すした上で、
「それに、学校内では、福島さんや加藤さんが監視しますから。」
「でも、四六時中つきっきりって訳にはいかないでしょう。ねえ、福島さん。加藤さん。」
お嬢様が尋ねると、指名された両名はバツが悪そうに、
「あーえっと。うちら、部活で朝練とかもやっているんで、流石にずっとは無理っすね。あ、でもいじめを見かけら守るっすよ。」
「話にならないよっ! それじゃあ今までとほとんど変わらないじゅあないっ。」
激昂するお嬢様。周りの子も、そもそもわたしら協力してやる方なのになんで説教されなきゃいけないわけ?とか、そもそもこんなのにうちの派閥が協力して何の得があるのよ、という声も聞かれ、場の空気が険悪化し始めた。

「あーわかったわかった。少しみんな冷静になり給え。」
ヒートアップの兆しを見せた議論のクールダウンを計る千条。
「後藤、真田、明石」
電脳部員三人衆が今日初めての指名を受けた。
「千条派閥30余名全員に通達。内容は、今後、一恋さんのいじめを見かけたものは速やかに派閥メンバ全員に情報を伝達するように。報告を受けたメンバは不急不要の用事がない場合は速やかに現場に急行し一恋さんを保護して欲しい。」
「分かりました!」
余名、ということは派閥についているかどうか微妙な生徒がいるからだろう。それでも30名の協力はかなり大きい。かなり踏み込んだ発言だ。
「それから、加害者2名は、学生としての本分に著しく反したので、改善の見込みが見られるまで今後旧校舎への立ち入りを禁止する!」
おおう!という歓声の声が上がった。貴族のプライベート空間である旧校舎で何をしようが新校舎側は一切手が出せない。旧校舎の代表である千条だけができる芸当だ。さすが、千条、パチパチパチ(←拍手)なのだが、そうは問屋が卸さない。

・・・



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Author:Catherinefx
ブラックあずにゃんさんのTwitterによる寄稿のライトノベルです。
絵:きゃさりん

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もともとは上記ブログで紹介させていただいていたのですが、最新記事から降順では読みづらいため、こちらに読みやすくまとめてみました。

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