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事情聴取

翌朝、私はいつもどおりお嬢様を学園に送っていった。この都市の治安はお世辞にも良くはないので、どの生徒も独りで登校することはまずない。必ず友達と一緒か、貴族ならば護衛を付けて登校する。つまり、私は毎朝護衛の任務も兼ねてお嬢様と登校しているわけだ。絶対に気を抜いてはいけない任務だ。

「きゃさりんさまーーーー!」
あれ、校門の方から声が聞こえる。幻聴!?いやこれは本当の声だ。まさか!?ついにお嬢様にもお友達が!?
「あんた、今失礼なこと考えているでしょう?」
「いえいえ、お嬢様にもやっとお友達ができ」
「よく見なさいよ!よくそんな視野の狭さで護衛が勤まるわね!」
「ええ!?」
あ、あれは・・・・
「そうよ、やっとわかった?」
「誰ですか?」
「生徒会副会長、福山みゆき閣下だよ!」
そんなことも知らないのか、と言いたげに大げさなため息をつくお嬢様。

ええええ!! この人がっ!? やだすっごい可愛い!!! ネットのイメージとは全然違うというか。すごい美人、負けたかもしれない!私、もっと強圧的で、鬼ののような凶悪な顔をしているものとばかり思っていたけど、全然違うよ!?いやほんとほんと!色白で、丸みを帯びた体型。おっとりとして、栗色の髪は胸までかかっている。あ、胸は豊かだ。とにかく、あれだよ、ネットのイメージとは全然違う。外見からは、おっとりぽわぽわした優しいお姉さんのような印象だ。

「キャサリン様ー、今日少しお時間よろしいですか?」
「よろしくない。つか、早く教室入らないと遅刻になるんですけどー」
心底迷惑そうな顔で吐き捨てるように言った。
「それなら、大丈夫でっす!姫宮さんの公欠の許可を頂いてきましたのでー」
「はあああああああああ!?」
ドン引きするキャサリン様。福山副会長は印籠のように文書を提示してみせる。内容は、
「姫宮キャサリン殿、○月✖日、生徒会副会長福山みゆきとの非公式会談のため、授業の出席を免除する。」
「あんた!何してくれてんのよ!?」
「しっ! 声が大きいよ!! 詳細はもっと落ち着いたところでゆっくり話すから。ね」
両手を重ねて拝むようにお願いする福山さん。若干焦っているように見える。なんというか、早くこの場を離れたいという気持ちがひしひしと伝わってくる。

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「まてっ!副会長ーー!」
後ろから猛然と突進してくる女生徒により、その理由はすぐに判明した。キキーっとブレーキがかかる音が聞こえてくるような勢いだ。若いっていいですね。
「副会長!どういうことよっ!なんでうちの研究室が一つ減らされるの!?あのお部屋は、先輩方から受け継いできた大事な部屋なのよ!研究生どうしの憩いの場にもなっているのに、後輩にどう説明しろってんのよ!」
福山さんは、うわ見つかっちまったよと言いたげな表情だ。
「お怒りはごもっともですが、あなたの専攻、つまり史学を先行する学生さんは年々減少していますので、公平性の観点から、お部屋も少なくするのが妥当と判断しました。」
「で、その代わりにデザイン科の部屋を増やすんだってね・・・すっごく奇妙ですね。デザイン科専攻の学生は一名しかいないはずですが。え?どう説明してくれるの?」
「そ、それは・・・」
バツの悪そうな顔をして目をそらす福山さん。
「えと、ですから、デザイン科の学生は、学園マスコットを制作して大成功させました。関連商品が多数売れたことで、学園も相応の臨時収入を得ることができましたので、そのご褒美の一環としてお部屋を・・・」
「はああ!? だからって、なんでうちらがそんな施ししないといけないわけ!?」
「ご、ごめんなさい。今日は先約があるのでこれで失礼します。さ、行きましょう!」
お嬢様の手を強引に掴んで逃げ出す福山さん。勢い私も走り出すことになるわけだが、
「ちょ!? まだ話は終わってない!!」
背後から抗議の雄叫びがこだまする。この紛争はあとをひきそうですね。福山さん。


3人とも出身成分がバラバラのため、3人で入店できる店がない。例えば、普通の喫茶店に行くと通常出身成分Cは入店を断られるし、かといって出身成分Cが入店できるお店はB以上の入店は断られる。というわけで、
「ま、このメンツだと、私の家に戻ったほうが良さそうだね。」
という、お嬢様の結論に達するわけだ。
「お手数をおかけして申し訳ないです。」
「別にいいよ?どうせ人に聞かれちゃ困る話をするんでしょうし。」
「あはは、話が早くて助かりますが。でもそんなに堅苦しく考えなくてもいいですよ?」
まあ、流石にこの発言は信じられない。どうせ、姫宮様の処分の話だろうし。こちらとしては、できる限りのおもてなしをして、相手の戦意をそいでいくことくらいしかやることがない。どんなお部屋でどんなもてなしをするか
で話の帰趨が変わるかもしれない。そう考えると、すでに戦いは始まっているといえよう。

「わああああ!素敵なお庭ですね。お屋敷は洋館なのにお庭は純和風というのも珍しいです。あっコイがたくさん泳いでる!コイって、人の足音だけで寄ってくるんですね。」
「まあ、餌をもらえると勘違いしているだけだけどね」
「ああ、そうなんだ。でもごめんなさいね。今何も差し上げるものがなくて。」
「いいっていいって。憂が定時になったら餌やってるから。」
「大きな池の周りが遊歩道になっているのですね。ああすごい!休憩所まで設置されてるよ。」
天真爛漫な笑顔で感嘆の声を挙げる福山さん。まあ、自分が手入れしている庭を褒められて悪い気はしない。
きっと、お嬢様も同じ心持ちだったのだろう。

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「そんなにここのお庭が気に入ったなら、そこの休憩室でお話しましょうか?」
「え!?いいんですか?」
「問題ないよ。憂、準備を!」
「畏まりました。」
さあ、戦いはもう始まっているよ。相手が感動のあまり思考停止するようなもてなしをして、話し合いが始まる前にこちらのペースを作ってしまおう!

「わあ、すごーーーい。まさか朝からプリンアラモードがてべられるなんて思わなかったよ。しかもこんな大きいの見たことない!」
ふふふ、早速私たちの術中にはまっている福山さん。プリンの大きさは通常の5倍。スイカ、りんご、いちご、メロン、ぶどう、が惜しげもなく盛り付けられ、ホイップクリームはもちろん、なんとアイスクリームまでついている。
「美味しいですね♪これ、貴族の女の子っていつもこんなに美味しいものを食べているんですか?」
「まさか、普段は質素だよ。てか、欲望を制御できないと無意識に魔法を使って身を滅ぼすからね。むしろ、贅沢は厳禁なんだよ。」
「う・・・ん?」
キョトンとした顔をする福山さん。
「魔法はただじゃないからね。アイスが食べたいからといってアイスを魔法で創造すれば、体力が削られるの。あれもこれもになってしまうと身が持たないから、普段から欲望を制御する訓練が必要なのよ。」
「それってつまり・・・」
スプーンを弄びながら質問する福山さん。
「格闘家が、日常生活では攻撃性が前面に出ないように精神を鍛錬するのと似てますね。」
「ああ・・・なるほど。いい喩えだね。」
福山さんのハイペースな食事と同じくらいに雑談も進んでいる。出だしは順調だ。冷えた体を温められるようにさりげなく紅茶を淹れる。
「では、貴族の方はみんな質素なライフスタイルになるんですね?」
「まあね。自分の身を破滅させないためと、あとは民衆からの尊敬を失わないためにね。まあ、例外的な人もいるけど。」
「ふうん、あなたたちも見えないところで苦労してるんだねえ」
うんうん、お姉さん感心しちゃったよとてもいいたげな頷き方だ。ちくしょういちいち仕草がかわいいなあ。でも、いまの発言には少し影があったな。なんというか、共感?私も見えないところではいろいろある的なニュアンスが感じ取れた。考え過ぎかな。

「さて、美味しいもてなしをしていただいて恐れ多いですが、そろそろ本題に入りたいと思います。」
お?いよいよ開戦か。こちらも気を引き締めねば。お嬢様の顔色にも緊張が・・・走ってない。プリンまだ食べ続けているよ。挙句、この発言だ。
「ん?いいよ、勝手に話しちゃって?聞いてるてるから」
いやいやマイペースすぎですよ。福山さんも苦笑しているし。こういうのは少し困るな。
「では、手短に要件を話しますね。」
別段、怒った風もなく、ニコニコしながら話す福山さん。出来た人だ。
「とある生徒二名から、姫宮さんに殺されかけたという訴えが届いております。なにか弁解はありますか?」
いきなり核心をついてきたよ。
「ああ、あれね。まず私に彼女たちを殺す意思はありませんでした。」
「それを、どう証明しますか。彼女たちは危険な大蛇をけしかけられたと訴えていますが。」
「あれは、私の脳内イメージを外に転位させただけ。殺すどころか危害を加える意図もなかったよ。」
「実際の大蛇を転移させたのではないですか?」
「それは無理。大蛇の正確な位置を特定できないと召喚できないから。もちろん、私にはにゅるにゅる動く大蛇の位置を正確に特定するなんて、大蛇の近くにいても難しいでしょうね。」
「姫宮さんが何もないところから大蛇を創造したということはありえませんか?」
「ない。それをするためには大蛇についての専門的な知識がないと不可能。筋肉とか骨格とか神経とか。もちろん、私にそんな知識はないし、付け焼刃で勉強したくらいの知識じゃとても無理ね。また、かりに創造する力があったとしても、とてつもない大魔法になるので、私の方も相当体力を使うはず。」
「その時、姫宮さんがクタクタになったという証言はありませんね。」
「でしょ?」
「では、最後の質問です。なぜ姫宮さんは彼女たちを怖がらせるようなことをしたのですか?」
「ねえ、この茶番、まだ続くの? あなたも全部わかってるんでしょう?」
「一応決まりですから。いやいやでもなんでもいいから答えてください。」
「あの二人が、一恋ちゃんに暴行をくわえていたからだよ。そのくらいやんなきゃ、あいつらいじめをやめないだろうからね。」
「なるほど。彼女たちがその時いじめを行っていたことは生徒会も認定していますし。うん全てつじつまが合いますね。」
「ふう、もう終わりでいいかな。」
「終わりでいいです。ご協力に感謝致します。彼女たちの訴えは却下します。ご安心ください。」
「まあ、当然だと思うけど」
「なにか、気になることでも?」
「どうしてあいつらは一恋ちゃんをいじめるのかなあと思ってさ。」
「それについては、分かりません。もちろん自分なりの意見はありますが。」
「その意見でいいから聞かせてくれない?」
「ひとつの理由として、貴族に対する差別意識でしょうね。」
ええっ!? これは聞き捨てならないよ!!
「貴族に対してですか!?キャサリン様もそんな扱いを受ける可能性があるのですか!?」
「憂、落ち着いて。話が複雑になる。」
「まあ、キャサリン様は大丈夫だと思いますよ。強いですから。いじめの基本は弱いものいじめです。」
そっか、とりあえず安心。
「で、貴族がなんで差別されるの?」
「貴族の方は、事実上、受験が免除されますから。」
「ああ・・・」
そう言われてお嬢様はバツの悪そうな顔をする。
「この学校は、3浪4浪当たり前の超難関校です。苦労して入学した生徒から見れば、貴族の方は楽をして入学して面白くない、という意識が差別のベースにあるでしょうね。」
「貴族は受験勉強の洗礼も受けずに入学できて卑怯だと言いたいわけ?」
「んー、まあ」
ちょっと思案顔の福山さん。当の貴族を目の前にしては言いにくいだろう。
「・・・」
お嬢様も黙ってしまった。
「ちなみに、あなたは貴族に対してどう思ってるの?福山さん。」
「私は、感謝していますよ。貴族のかたの寄付がなければこの学校の運営だって成り立ちませんから。それに、国富の源である貴族の魔法はとても貴重な力ですし。ただ、」
「ただ?」
「貴族の寄付は、各種免税特権に守られて蓄財された富から拠出されたものだと考えている学生が多いのも事実です。」
「別にいいじゃない。きちんといいことにお金を還元しているんだから。」
「ええ確かに。でも、威張れるような話じゃないですよね?元々、帝国国庫に収められるべき税金が公共のために使われたとしても、それは当たり前の話じゃないですか?私たちに貴族へのリスペクトを求めるのは筋違いです。」
「なに、あんた喧嘩売ってんの?貴族はずるして私腹をこやしているから、学校でいじめられてもしかたないってこと?んで、生徒会は守る気がないと?」
「いえ、そこまでは思っていません。私個人としては貴族の方には感謝していますよ?」
「憂! あんたは? あんたは貴族についてどう思っているの?」
おっと、こちらに飛び火してきたよ。
「私、というか賎民全般に言えることですが、貴族の方には感謝しかありませんね。彼らの施しなくして私たちの生活は成り立ちませんから。正直申し上げて、貴族の方の富の一部が庶民に移れば、私たち賤民は餓死者が続出すると思います。庶民の方は賤民を疎んじていますし。民主主義の名のもとに庶民の方が多数決の暴力を振るうようになれば、一番割を食うのは賤民でしょうね。」
「いえ、そんなことはないです。ないですよ。自由に使える税金が増えれば賤民の方への教育機会も与えられるようになると思います。きちんとした教育を受けられれば賃金の高い職に就くようになれます。貴族の施しに頼る理由もなくなりますよ?」
「申し訳ございませんがとても信じられません。あなたがた庶民が過去・現在賤民にどんな仕打ちをしているかを考えれば。」
「そ、それは確かに反省の余地があるけど。でもそんな差別意識を持っている人ばかりじゃありません。」
「差別意識を持たないで差別をする人が一番タチが悪いですよ?」

「ちょっとちょとあんたたち!もうやめよう、この話。」
ああ、知らないうちにヒートアップしてしまった。申し訳ございませんお嬢様。お嬢様は残っていたお水をくいっと飲み干し
「身分制社会の是非については今日のテーマではないはずだよ。」
「ええ、そうでした。ご不快な思いをさせて申し訳ございません。」
申し訳なさそうに謝罪する福山さん。まあ、あれだ。外見どおり甘い人かと思ったけど、いや基本的には優しい人なのだろうけど、言うべき時にはきちんと言えないと、アクの強い学生をまとめられないのだろう。
「あの、憂さん? お手洗いは近くにありますか。」
「お手洗いは、お屋敷まで行かないとないのですよ。」
もちろん、姫宮家では外のトイレぐらい設置する財力はあるけども、管理する立場としてはこれ以上の負担は無理だ。メンテナンスを業者さんに頼むにしても、家の間取りを把握されるのは防犯上よろしくない。つまり、外にトイレはない。
「憂。ご案内して差し上げなさい! くれぐれも失礼のないようにね?」
さっき険悪なムードになってしまったのでお嬢様から釘を刺されてしまった。これはもてなす側としては失格だ。反省しないとね。

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「では、福山さん。ご案内いたしますね。」
「ええ、よろしくお願いします。」
基本的に、女性がお手洗いを告げるのは躊躇するものだ。だからよほど切羽づ待っているのかと思って早足で先導しているが、福山さんにはあまり焦りの色が顔に出ていない。妙だな、と思ったが気にしないようにした。そして、それは玄関の扉を開けて福山さんを中に入れしめた瞬間に起こった。

「ねえ、憂さん」
「はい、なんでしょう?」
って魚おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!
いきなりキスされたのですが!?え?何この展開??この人こういう趣味があるの?お手洗いは口実で私と二人きりになるために誘導したのか?やだ、すごく恥ずかしいんですけど。フレンチキスじゃなくてもっとディープなキスだよ。
「う・・・ん・n」
なんとか声を出そうとしてみるが、口が塞がれて声が出ない。それに、かなり息苦しくなってきた。は!? まさか、新手の殺人手段!? 確かにこのままこの体勢が続けば呼吸困難で死に至るだろう。くっ、別に死を恐れはしないが、まさかこんなくだらない手段で暗殺されるとは無念の極み。さきほどの私との会話は彼女にとっては殺したいほど不快な内容だったのか。うかつだった!人間心理を読み間違えた報いか。ああ・・・意識が、意識が遠くなる。せめてお嬢様・・・に・・・ともだちが・・・でき・るまではいきてい・・・たかった。口の中に何か丸薬のようなものが押し流される感覚を最後に私は意識を失った。

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「起きて」
福山さんが命じる。私は従う。理由はまるでわからないが、彼女の言うことには従わないといけない気がするのだ。
「聞きたいことは二つ。」
「はい。」
「直近の千条派閥の会議で参加した人数は?」
直近・・・?ああいじめ検証委員会か、あの時は確か
「12名です」
「たったの12名か、くす。」
福山さんは笑う。何がそんなに愉快なんだろう。
「学園裏サイトでは、一恋さまがいじめられたときは千条派閥のメンバーが助けることに決まったと書いてあったけど、実際に命令を実行したのが何人だったか、あなた知ってる?」
「いえ、寡聞にして、存じ上げません。」
「そう、もういいわ。しばらく寝ていなさい。」
「はい」
そう言われた刹那、私の意識は今度こそ暗転して戻らなかった。

・・・



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テーマ : オリジナル小説
ジャンル : 小説・文学

裏設定

国家体制
擬似民主主義的絶対王政を採用。元首は皇帝。衰微する貴族勢力と台頭する庶民勢力の妥協の産物として創造された制度。貴族同士の互選で選出される貴族院と庶民による選挙で選ばれる庶民院で構成される。法案成立のためには貴族院の同意が必ず必要とされるので、外形的な民主主義にとどまる。しかも、貴族院の5分の4以上は皇帝支持派なので、絶対王政の内実は担保されている。但し、皇帝は自身の支持基盤である貴族の免税特権を犯すことはできず、また安定した政治を行うためには、人口の85%から選出される庶民院の議決を事実上無視できず、絶対王政とも一線を画する。

社会制度
身分制と万人特権主義を基本とする。万人特権主義とは、皇帝が身分に応じて万人に特権を付与するというもの。各身分は上から、貴族、庶民、賤民に分類される。身分の構成比は、貴族5:庶民85:賤民10である。

軍制
禁軍、貴族軍、民軍の3軍体制。
禁軍
皇帝直属の軍隊。古代兵器による訓練を許された世界最精鋭の軍隊である。出身成分B以上、つまり貴族、庶民階級の軍事系エリートの集団。枢密学校の軍事系エリートは禁軍の幹部になる。

貴族軍
貴族による私設傭兵団。訓練はよくされているが、古代兵器へのアクセスが禁止されているため禁軍には劣る。構成は全て賤民。忠誠度は高い。

民軍
税金を免除する代わりに徴兵された下層民衆からなる。装備品弱で訓練もあまり行わない。これは、民衆による反乱を警戒しての措置である。主に国内の治安維持や災害対策に使役される。

皇帝
別名、地上における神の代理人。皇帝は、神が希求する理想の人間社会を神に代わって実現させる責任と権限がある(天命思想)と信仰されている。
別名、至高の魔法使い。失われた古代兵器(重火器類)を復元させる能力を持つ。皇帝は古代兵器を大量に保有し、少数のエリート兵士に訓練させることで、軍事的に絶対的な優位を保つ。
別名、十善の君。皇帝は、前世において極めて大きな善行を行った報酬として皇帝としての地位を授けられていると信じられている。(因果応報説)

つまり、皇帝は、政治的には貴族院、軍事的には古代兵器、宗教的には天命思想、倫理的には因果応報説によって自信の立場を確立している。

皇帝は、身分制社会(すなわち神の定める理想の人間社会)の維持のため万人に特権を付与する権限と責任がある。

貴族
貴族の定義は魔法が使える者。能力の多寡に応じて爵位が与えられている。主な特権は免税。魔法の力は、永らく貴族中心の社会を支える要であった。それは、経済的にも軍事的にも必要不可欠なもの。ただし、魔法に依存しない科学技術が高度に進化した結果、庶民にも豊かな富や文化が蓄積されるにいたり、貴族の地位は相対的に低下しつつある。台頭する庶民勢力に対抗するため、貴族は賤民を積極的に保護し自身の支持基盤とするようになった。

庶民
人口の85%を占める。主な特権は、税負担額に応じて職業を選択する自由が与えられていること。結果、富裕層と貧困層の格差が極限化された状態で階層的に固定化されている。富裕層は重い税負担からの開放を要求し、貧困層は社会保障制度の充実を要求。賤民身分の者が困窮した生活を送るのは、前世での大罪の報いであるという、因果応報説を信奉し、豊かな生活を営む貴族へのやり場のない妬みを賤民に押し付けるものが多い。

賤民
人口の10%を占める。主な特権は、人身売買をされない権利、物乞いをする権利、公共の場で商売をする権利。施しのほとんどは貴族からいただくので、貴族崇拝者が多い。また、貴族に直接雇用されるエリート賤民もいる。貴族にとって、このような賤民保護政策は慈善事業(=善行)であると同時に、台頭する庶民勢力の圧力から貴族を守るための盾としても機能する。庶民から有形無形の差別を受けることが多く、庶民を激しく憎んでいる。

宗教
旧教と新教からなる。両宗教とも善行を積むことで死後天国へ行けるとする考えは同じ。ただし、善行の規定に差異がある。

旧教は、神は全ての人間の運命を決定する絶対的な力があるとする。それゆえ、現在の社会制度は神の定めた制度として身分制社会を肯定することにつながる。その結果、各身分の者がそれぞれの身分に応じて与えられた役割をこなすことが神の意思をこの世で実現することになるという思想に発展し、これこそが最高の善行とされる。しかし、あまりにも神の絶対性を強調しすぎたため、人間サイドでどのような努力をしようがしまいが運命は同じだという自堕落な思想に後退。その結果、矛盾に満ちた社会の現状を無気力に受容する精神を育んでしまう。新教側は、このように自己改変を拒否し現状に甘んじる行為を悪行と規定し旧教側を攻撃。主な信者は貴族と賤民。

新教は、自力救済を主張する。正当な手段で得られた富の蓄積も善行の一種と規定。この規定を発展させ、倫理に著しく反しない限り、人間の欲望を積極的に肯定し、社会発展の原動力にすることを主張する。「運命は自分の力で切り開くもの」と教え、変革と努力の価値を強調。これは、運命を決定する権利を神から簒奪し、人間側に移すことと同義。また、欲望の肯定は身分不相応な生活スタイルを確立することになるので、旧教の価値観とは相容れない。旧教側は、自力救済を神の絶対性への挑戦と読み替え、また人間の欲望の肯定が人間中心主義に堕落し、神の権威を著しく毀損するとして、それぞれ悪行と規定、新教側を攻撃する。主な信者は庶民。

枢密学校
 皇帝権力を支える枢密院(皇帝直属の諮問機関)のメンバーを育成するための学校。
高度な教養に裏打ちされた高い専門性で皇帝に直接助言を行える人材の育成を目指す。学校入学資格は、もともと貴族だけに限定されていたが、優秀な人材の確保と台頭する庶民勢力を体制側に取り込むことを目的に庶民にも門戸が解放された。
 12歳以上の貴族・庶民に受験資格が与えられ、入試は一年に一回。一人六回まで受験機会が与えられる。入学に要する基準は非常に厳しく、教養だけではなく高い専門性も要求される。そのため、三郎四郎は当たり前で、中には六回全ての受験機会を使い切って合格を果たす者もいる。
 但し、貴族は魔法が使えるので専門性を試す試験は免除される。そのため、貴族の合格は庶民に比べて格段に容易となり、庶民系学生との軋轢が生じる一因となる。
 入学者は、入学及び研究に必要な費用が全て免除され、入学後の実績に基づいて月に一回ベーシックインカムが支給される。
 
枢密院
皇帝に助言を行い、法律と同じ効力を持つ詔勅を作成す機関。国会の議決によらず法律を成立させることができるので、絶対王政を直接支える機関といえる。

外交
庶民院議員を中心にした積極外交派と貴族院議員を中心にした消極外交派に分類される。

積極外交派(帝国主義政策)
積極外交派は、積極的な外征を主張し、外国貴族領の接収を通じて、食料供給地・原材料輸入地・統一市場の獲得を目論む。旧貴族領からもたらされる安価な穀物が帝国内の工場労働者の食糧事情を改善し、また大量の安価な原材料の獲得は大量の工業生産物の製造を可能にし、外征で獲得した統一市場で売却することで劇的な経済成長を実現した。

消極外交派
ミニマム政府として各地で自立していた貴族どうしの緩やかな連携で世界平和を維持しようとする考え。伝統的な外交戦略であったが、台頭した庶民勢力が積極外交を主張し、その実現が経済の反映につながり、国民の生活水準の向上に資することが実証されたので時代遅れになった。

皇帝家が積極外交を支持し、最大貴族の姫宮家が積極外交派に転向するに至り消極外交派は勢力を弱めつつある。

尚、積極外交派は千条大公国の征伐を主張する北伐派と由納公国の征伐を主張する南伐派に分類される。
プロフィール

Catherinefx

Author:Catherinefx
ブラックあずにゃんさんのTwitterによる寄稿のライトノベルです。
絵:きゃさりん

とある乙女の裁量決済(ロスカット)
http://catherine2010.blog119.fc2.com/

もともとは上記ブログで紹介させていただいていたのですが、最新記事から降順では読みづらいため、こちらに読みやすくまとめてみました。

最新記事も上記ブログで読むことができます。

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