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懺悔

気がつくと私は寝ていた。どこで寝ているのかは定かではない。場所を確認しようと必死に目を開けようとするが、私のまぶたが開くことを拒否する。では、せめて手足を動かそうと思ったのだけど、どういうわけかピクリとも動かない。これは、金縛りみたいなものか。体の一部の血流が悪化したらしくちょっと動かしてコリをほぐしたいのだけどそれもままならないのは想像以上に苦しい。焦る気持ちを必死に落ち着かせつつこの不快極まる状況から抜け出す方策を考えてみた。すると、聞きなれたご主人様のお声が耳に飛び込んできた。
「すると、副会長はいじめはいじめられる方に問題があるといいたいわけ?」
「いえ、そうは言いません。いじめは絶対悪です。条件があれば許されるものではありません。」
「でも、あんたさっきそんな言い方してたじゃない。」

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どうやら、お嬢様と福山さんが一恋ちゃんのいじめの件で意見交換をしているようだ。二人のお声が聞こえるということは、私の聴覚は生きているらしい。

「そうは申しません。ただ、この学校の風土を考えると一恋ちゃんがいじめを受ける条件が不運なことに多いと指摘しただけです。」
「・・・」
「第一に貴族の方は民衆の方に比べ格段に合格しやすいです。これは、一般学生の妬みをかう土壌になります。第二に、貴族は魔法が使えるからという理由で専門の受験が免除されていますが、その肝心の魔法が一恋ちゃんの場合インパクトにかけます。第三に、一般教養でも彼女の成績は悪いです。」
「・・・」
「一専多能を教育目標に掲げる本学にとって、一般の学生の目には、彼女の存在が異質なものと写ったとしても不思議ではありませんね。」

直接的な言い方こそ避けているものの、福山さんはどうやら自主的に一恋ちゃんが学校を去りたくなるような雰囲気を醸成させったいのかもしれない。強制ではなく、あくまで合法的に。

「ようは、こういうこと? あなたには彼女を守る意思がないと?」
「ふううう・・・」
寂しげなため息?をつく姫宮さん。
「私だって、」
「え?」
「私だって、この学校に来るまでは理想がありました。私の力でみんなで仲良く切磋琢磨しながら成長できるような、そんな学園にしたいなって。でも、この学園の慣習にそまり曲がらずにまっすぐ頑張ってきた結果、少しづつ少しづつ正義感が蚕食されて他人の痛みに鈍感になり今の私が形成されました。それは認めます。」
「あんたねえ、そういうのを開き直りというのよ?あなたは自分の意思を放棄し、なにか問題があれば学校の慣習のせいにして逃げているだけじゃない?」
「かもしれませんね。」
「卑怯だよ?」
「ええ、卑怯です。でも、この程度には卑怯にならないとこの先やっていけませんよ?正義の味方の姫宮さん?」
「私はいつだって私であり続けるわ。いままでも。これからも、ね。」

ふむ、お嬢様はかっこいいセリフをおっしゃっている。あたりにお嬢様のお好きないちごの匂いがかすかにするので、私が寝ているお部屋はお嬢様の部屋のようだ。嗅覚復活!さて、お嬢様のかっこよさに福山さんはどう反応するか。

「どうか、」
「え?」
「どうか、この先何があってもその気持ちを忘れないで欲しいです。」

福山さんがどのような表情をしているのか、目が開けない私の知るところではない。ただ、私たちはしがらみの中に生きているのであって楽園に生きているわけではない。多少卑怯なことやずるいこともやらなければ生きていけないこともあろう。ある意味、大人になるとは、そういった卑怯さやずるさに鈍感になることなのかもしれない。
それでも、いやだからこそ、大人は、若者特有の青臭さ潔癖さにあこがれが強まるのかもしれない。福山さんの心境を私なりに代弁するとこんな感じになろうか。

「ふん、言われなくても私は正義を貫くよ」
「クス」
「はああ!? 今笑ったでしょう?」
「いえいえ、あまりにも可愛らしいのでつい。」
「可愛い?正義を貫くのが?」
「姫宮様は、正義は絶対的なもので一つしかないとお考えのようで。その考え方が子供っぽくて可愛いなあと。」
「あんたねえ。私だって世の中には色々な正義があることぐらい知ってるよ。でも、少なくともいじめを是とする正義は寡聞にして知らないよ。」
「まあ、確かにいじめは絶対悪と言ったのは私ですよね。でも、加害者には正当な処罰がくだされたのでもういいじゃありませんか?」
「小遣い一ヶ月カットじゃ、甘すぎるよ。」
「処分が甘いのではないかというご意見があることは知っていますよ。でもね、甘い処分でも正式な処分です。履歴に傷がつきます。いじめた生徒は、今後当然受けられる様々な便宜が受けられなくなるので、見た目以上に実は厳しいのですよ? 少なくとも、エリートコースからは完全に脱線するでしょう。もっとも、もともとそんな実力には恵まれていない子のようでしたが。」
「この先、」
「え?」
「この先、万一、一恋ちゃんへのいじめが再発した場合は、暴れるからね?」
「ふう・・・ご自由に。」

二人の会話を聞いているうちに、聴覚と嗅覚は回復したものの、どうしても声を出したり体を動かしたりができなかった。正確に言うと、声を出したつもり体を動かしたつもりになっているだけで実際には身動きが取れないのだ。ものすごい焦燥感の中、二人の会話を追いかけるのはかなり疲弊した。そのせいだろうか、私はまた昏睡した。

・・・



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回復そして「再発」

「う・・うん・・・」
どれくらい時経過したのかは不明だが目覚めの時は唐突にやって来た。あたりを見回すとお嬢様の自室であることが確認された。で、当人はいまPCに見入っているわけだが。
「憂?起きたの?」
「お、お嬢様。私」
「急に倒れたところを福山さんに助けられたんだよ。福山さんは、彼女の家の系列の病院の先生を手配してくれてね。医師の見立てでは過労だってさ。まあ、私もちょっと無理させすぎかなと思っていたからさ。一週間ほど安静にしてるといいよ。」
「福山さんには世話になったのですね。」
・・・おかしいな。素直に感謝の念が湧いてこないのはなぜだろう。倒れたときの記憶が曖昧で全く思い出せないのに関係しているのだろうか。
「そうだよ。彼女にも御礼を言っておいてね。」
「はい、必ず。」
といっても、全然感謝の念が湧いてこない。
「あと、ごめんなさい。」
「え?」
「だ、だから。この広いお屋敷と私の世話を一人でするのはやっぱり無理があったんだよ。うすうす気づいていたんだけどさ、私人間嫌いだから、あんまり人を置いておきたくなくて。結果的に憂に負担をかけることになってごめん。」
お嬢様はぺこりと頭を下げた。
「いえ、そんな。私は、全然平気ですし。」
事実、体調的には全然問題がないのだ。過労で倒れたと言われてもまるで実感がわかない。
「そう?でも倒れたのは事実だからね?」
「はい、以後体調管理には万全を期します。」
「それでね、憂。起きたばかりで悪いけど、」
「なにかあったのですね?」
「うん。例の学園裏サイトで気になる動きがあるの。」
お嬢様の顔は暗い。
「気になるとは?」
「まあ、これを見てよ。ああ起きなくていいよ。タブレット渡すから。」
お嬢様は7インチ型のタブレットを私に横してくれた。これなら寝ながらでもネットができる。便利な世の中になったものだ。ええと、内容は、

・・・
生徒会。いじめにGOサイン!

過日、一恋さんへのいじめの件で生徒会で処分が決定されたが、その処分は一ヶ月のベーシックインカム停止という極めて甘い処分であった。これを受けて、生徒たちの中には、暴行を含むあれだけひどいいじめでこの甘い処分ならば、目立たないようにいじめをすれば何もおとがめはないだろう、という邪な考えを抱く者が決して無視できない数に上ることが我々の調査で判明した。
 具体的には、机の上に花瓶を置く、無視、教科書の毀損、体操着を引き裂かれる、弁当箱をゴミ箱に捨てる、などのいじめ行為がすでに確認されている。ただ、今までのいじめとは違って今回は加害者がわかりづらくなっているのが特長だ。それもそのはず、いじめの加害者は、犯人が特定されないように慎重に行動していることに加え、いじめに加担せずとも、いじめを見て見ぬふりをする者がかなりの数に上ることが推測されるからだ。
 つまり、いじめの事実はあっても加害者がわからないようになってしまっている以上、いじめを止めることは今まで以上に難しくなった。今回のいじめは明らかに、生徒会の甘い処分が生徒たちを増長させたのが直接の誘引になっている。

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・・・

「なんて不埒な・・・」
私は絶句した。
「お嬢様、お嬢様はこのいじめ問題、どうしたいと思いますか?」
「解決するよ。生徒会があてにならないとわかった以上、解決する気のある生徒が立ち上がらなきゃ。」

お嬢様の性格から言えばそういう発言になりますよね。
「ですが、お嬢様。このいじめ、根が深いです。根底には貴族に対するやっかみもあるようですし。そうなると、ある意味、ほとんどの学生が加害者になっているといっても過言ではないでしょう?」
「う・・・確かに。今までは特定の生徒だけによるいじめだと思ってたけど、そうじゃないみたいだし。」
「まあ、あえて加害者を特定するとするならば、学園に流れるふわっとした空気みたいなものでしょうか。学園の価値観に合わない生徒は何をされても文句は言えないといったよどんだ空気。」
「そんなの、私一人じゃどうしようもない。でもどうにかしたい。」
「もう一度、千条様と話し合ってはいかがでしょう?」
「あいつ嫌い。」
「では、どうするおつもりですか?」
正直な話、今は千条様の力を借りなければ、このいじめ問題は解決に向かわないだろう。いや、借りたとしても難しいくらいだ。
「私一人でなんとかするよ」
と、おっしゃられてもお嬢様ができることはいじめ現場を目撃した際に直接干渉するぐらいだ。これではその場しのぎにしかならない。既に限定的な効果しかないのは立証済み。やらないよりはまし、という程度の効果しかない。
「わかってる。ああ、私の分身があと二人いればなあ。」
と、愚痴を言っても仕方がない。どうしてもお嬢様はいじめ現場を抑えて干渉すればよいという解決策から抜け出せないでいるようだ。もぐらたたきが有効なのはもぐらの数が少ない時だけ。今回のように、もぐらが多い場合、背後から叩かれるのはむしろこちら側になりかねない。叩かれたくないのなら、こちらも数を揃える必要がある。そして、お嬢様には、手っ取り早く数の力に頼れる条件が与えられているのだ。
「千条様のお力をお借りしましょう。彼女からもなにか連絡が来ているんじゃありませんか。」
「き・・・キテナイよ?」
「いや、来てますよね? 目が泳いで声が裏返ってますよ?」
「来てないったら来てないの!」
若干、キレ気味に叫ぶお嬢様。どうやら他人の助け、特に千条様のお力を借りることはお嬢様の虚栄心を痛く毀損するようだ。これ以上の追求はやめておくべきだろう。

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「ふう・・・」
とはいえ、千条様の援助なしでどうやって問題を解決するつもりだろう。見通しの暗さに思わずため息が出てしまう。
「と、とにかく、今日明日で戦略を練るから、あなたはせいぜい楽しみにしていることね!」
絶対に無理をしていると思うが、ご主人様がそこまで言うのなら仕方がない。
「分かりました。では、私も知恵を絞りましょう」
今日のお茶会はこれにてお開き。これからどうなるんでしょうね。

・・・



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Catherinefx

Author:Catherinefx
ブラックあずにゃんさんのTwitterによる寄稿のライトノベルです。
絵:きゃさりん

とある乙女の裁量決済(ロスカット)
http://catherine2010.blog119.fc2.com/

もともとは上記ブログで紹介させていただいていたのですが、最新記事から降順では読みづらいため、こちらに読みやすくまとめてみました。

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