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役員サイド

「姫宮きゃさりんが何を始めようが、あたしには関係ないんで! いちいちくだらないことで連絡しないでください!」

たたきつけられるように電話は切られた。
あ、どうも、Faiうららです。

病み上がりで生徒会に復帰した後、初めての仕事が、抗議の断食を始めたきゃさりん様に謝罪とお見舞いに行くように、福山派閥の対貴族強硬派のメンバーに電話をかけまくることであった。

だれか、代わっていただけませんかね? バイト代時給一万円、お支払いいたしますから。
「そっちはどう?あいり」
私は親友であり同じ役員でもある福山あいりに尋ねた。子動物のリスのように体格も性格も大人しい彼女にとって、このステレスフルな仕事はきついだろう。

「えっと・・・『あの坂本龍馬気取りの勘違い女への対応は、あなたたちで何とかしなさい!』と怒鳴られました・・・」

Comic10.jpg

涙目で顔でため息をつく小さな私のリス。かわいそうに、こんなことに巻き込まれて。

「いえ、こんなことぐらいで弱音を吐いてはいられませんね。お姉ちゃんはもっと大変な思いをしてるから」
あいりは自分を奮起させるように力強く宣言した。

生徒会副会長たる福山みゆきさんは、今日の朝、きゃさりんおじょうさまが抗議の断食を始めたとの一報が届いた後、全ての予定をキャンセルし、役員と派閥執行部を召集し対策会議を開いた。

結果、私とあいり、執行部数名には、対貴族強硬派に電話をかけ、きゃさりん様にお見舞いと謝罪に行くように指示を出し、みゆき副会長自身は対貴族協調派への対応に回ることになった。

実は、貴族はいじめ問題が全面解決するまで、能力の提供を無期限で凍結すると声明を出したため、貴族との協力を前提で研究活動を進めている対貴族協調派から怨嗟の声が噴出している。
みゆきさんは、彼女たちの恨みを慰撫し、合わせて問題解決の道筋を説明するという大体困難な任務に現在務めているのだ。

「正直、みゆきさん。今回は厳しいでしょうね」
「ええ・・・。新しいいじめ対策規定を発表して、全方位円満解決の予定が全て狂いましたから」

全方位円満解決どころか、全方位からもれなく恨みを買っているような気がする。

私がみゆきさんのことを案じていると、当の本人がようやく任務を終えて帰ってきた。

「やあ、みんな! 首尾はどう・・・?ってその暗い顔じゃ聞くまでもないか」
「お姉ちゃんのほうはそうでしたか?」

「彼女たちの苛立ちはピークに達しているわ。研究予算を一律に1.1倍にする提案をしたんだけど、ごまかされなかったわねえ、彼女たちは。『そんな提案はいいから、解決の道筋を示しなさいっ』てつめ寄られるし。ありゃ、参ったわ。ゾンビの集団に襲わている自分を幻視したわよ」

みゆきさんの顔色はだいぶ悪い。呼吸も荒く、肩で呼吸している。相当な修羅場であったことが推察される
私も何か生産的なことを提案しなければ。
「みゆきさん。私は貴族の方と一緒に研究活動をしているので、貴族の方とのつながりは深いです。私が直接出向き、一人一人に真摯に向き合えば、」

「副会長!大変です」
だが、私は自分の提案を最後まで口に出すことができなかった。
「どうしたの?トラブル?」
みゆきさんは、やれやれといたふうにお茶を口にしながら報告を待っている。

「対貴族協調派の数名の生徒が秘密裏に姫宮きゃさりんさまのもとに表敬訪問をしたそうです!それを受けて、慰問に来た生徒に対しては、研究の協力を再開すると由納言美様が発表しました!」
「なんですってえええええ!」
驚愕のあまり目を見開くみゆきさん。
「それだけではありません!対貴族協調派のなかで、姫宮きゃさりん様のもとに表敬訪問に伺う動きが活発化しています!」
「ちょっと、待ちなさいよ! なんでそんな大事なことを私に報告する前に勝手にやっちゃうの? 私は派閥のトップよ!」
「はあ、そうですねえ」
罰の悪そうな表情をするみゆきさんの腹心。そりゃそうだ。まさか、『みゆきさんに頼るより、姫宮さんに直接頼んだほうが解決が早いからじゃないですか?』とは、言えないだろう。

みゆきさんは、動揺を押さえるために立ち上がり、部屋の中をうろうろと回り始めた。と、そのとき別の腹心が部屋に入ってきた。

「大変です!」
「きゃさりん様への表敬訪問の話ならもう聞きました」
辛うじて自分を抑えながら答えるみゆきさん。緊張と不安を緩和する薬だろうか、何か粉薬を口に入れている
「いえ、別件で!姫宮さんへの表敬訪問を斡旋している人間が判明しました!アル操さんです!!!」 

「ぶはあっ! げほっ! ぐはっ!」
粉薬が喉に使えたのか、苦悶の表情を浮かべながら、両方の手で空気を鷲掴みにするみゆきさん。
みゆきさんは、水を一服し、不安や恐れや怒りで渾然一体となったような表情で目に闘志を燃やして叫んだ!

「ああrるーーーーーーーーみーーーーーーーーーーサーーーーーーーーおーーーーーーーーーー!!!!!!」

はあはあと怒りのあまり呼吸が整えられないみゆきさん。

「これはもう、出来心で弁解できるような段階を超えたわよ! 私に対する明白な挑戦だわ!」

「あいり!」
「はい!」
「私の許可なく姫宮様に表敬訪問を行った生徒の研究予算を凍結しなさい!」
「Faiさん!」
「はい」
「私の許可なく姫宮様に表敬訪問を行った生徒の古代テクノロジーへの情報アクセス権を剥奪しなさい!」

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研究予算1.1倍という飴が効かなかったので、今度は厳しい鞭をふるうみゆきさん。
私も福山派閥を支える立場として何かしないわけにはいかない。

「みゆき副会長! 私を旧校舎に派遣してください。貴族とのパイプが一番太い私こそ、貴族との交渉に最適です」
「それはそうだけど。きゃさりん様は役員全員の即時辞任を求めているわけでしょう」
みゆきさんは疲れたようにため息をついた。

「実は、内々に貴族の方との交渉を継続した結果、いじめ問題全般を貴族系学生に委任するという条件で姫宮さまは納得する可能性が高いことが分かったんですよ」

どうよ? みゆきさん。私の交渉能力に脱帽でしょう? ほめてほめて♪

何回も確認したけど、いじめ主体である私たちがいじめ救済者の役割を果たすという構造的な矛盾が問題解決を不可能にしている。だから、役員全員辞任という全面降参をしたくないのなら、いじめ問題を貴族たちに丸投げするという部分降参も、一つのカードとしてそろそろ真剣に検討しないといけない段階に来ているのだ。

「いじめ問題全般?」
「ええ、いじめ加害者の特定調査ならびに懲罰の権限を・・・」
「話にならないわ!」
激昂しながらも、みゆきさんは言葉を続ける。
「いいこと! そんなことを許したら、対貴族強硬派の生徒が軒並み懲罰処分を受けることになるのよ。彼女たちとの信頼関係が決定的に壊れてしまうじゃない!」

確かに、正論だ。正論だけどそれは権力の防衛という観点での正論に過ぎない。
「お姉ちゃん。じゃあ、調査権限と懲罰権限を切り離して、調査権限だけを貴族の方たちに委任したらどうかな?」
あいりは、私とみゆきさんの意見を足して2で割ってみせた。

「ううん・・・それなら。ギリギリのラインで派閥が割れないですむかも」
みゆきさんは難しい顔で考え込んでいる。
・・・ってちょっと待って、待ってよ二人とも!
「役員全員の辞任」から「いじめ問題全権付与」に要求を落としてもらうことで、きゃさりんさんはすでにギリギリの譲歩をしたつもりになってるよ!
このうえさらに妥協を要求したら、キャサリン様は怒るよ、絶対!

「よし、負けた! いじめの調査権限を認めるという話で、キャサリン様を納得させてきて頂戴。Faiうららさん」
いや、全然負けてないですからね!? いじめ加害者を特定しても、微罪処分に付されるのが見え見えなら、きゃさりん様が納得するわけないじゃない!

もうやだ! 
現実が見えてないないよ、この人達!!!


・・・



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プロフィール

Catherinefx

Author:Catherinefx
ブラックあずにゃんさんのTwitterによる寄稿のライトノベルです。
絵:きゃさりん

とある乙女の裁量決済(ロスカット)
http://catherine2010.blog119.fc2.com/

もともとは上記ブログで紹介させていただいていたのですが、最新記事から降順では読みづらいため、こちらに読みやすくまとめてみました。

最新記事も上記ブログで読むことができます。

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