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幻の姫宮派閥

「苦しゅうない、あー、苦しゅうない!」
次から次へと、まるで押し寄せる波の如く訪れる表敬訪問の生徒達に、私、姫宮きゃさりんは今までにない多幸感に包まれていた。

Comic12.jpg

「ははは、憂! 報告しなさい!千条派閥の方は何人慰問に来てくれたの?」
「はい!これで20人になりました」
「ふははっ! つまり、半分は来たということね?」
「そういうことになりますね。お嬢様!次の方は、なんと福山派閥の方ですよ。次の方どうぞ~♪」

憂は次の訪問者を呼んだ。
愉快痛快♪

「由納グループ、菫グループは我が軍門に下り、千条派閥もすでに半分落ちたのねっ!しかも、福山派閥の一部まで我が派閥は侵食を開始した♪ くわあああ!たまらないわああああああ!」
「ちょっと、あんた!!何、勘違いしちゃってんの!? みんなは、あんたの断食に協力してるだけであんたの手下になったわけじゃないからね?」

何か猿が負け惜しみを言っているけど、気にしない気にしない♪
「全て、お嬢様の人徳のなせる業かと愚考いたします」
「ちょっと、憂さんもこいつおだてるのやめてよ! こいつの妄想が余計ひどくなるから!」

「何を言うのよ。無礼な! 私は正気よ!!」

「姫宮様! 『姫宮きゃさりんさまの益々のご活躍をお祈り申し上げます』と、ただいま申し上げた私の挨拶のどこに不快感を感じたのですか!? お答えください!!!」

訪問者は、自分が不興を買ったと勘違いをして必死に問いただしてきた。

「ああ、いえいえ。あなたのお優しい心は十分に伝わったよ♪ ありがとうね。別室で粗茶をご用意したから、ぜひ休憩していってね」

ふうう、私は自らを落ち着かせるべく水を口に含んだ。断食の影響で感情の起伏が激しくなってんのよね、実は。
「ちょっと、猿!あんたが余計な茶々を入れるから、姫宮きゃさりんがとうとう正気を失ったと思われたかもしれないじゃないの!!」
「いや、あんたマジで頭おかしくなってきてるよ?」

「何よ!姫宮派閥がうなぎの滝登りで勢力を拡大させていく様を見るのがそんなに悔しいの!?」
「だーかーら!そんな派閥はあんたの頭の中にしか存在しないんだって!!」

ああ・・・なんて素晴しいの。みんながみんな私の一挙手一投足に無関心ではいられないなんて。私って、やっぱり、大物じゃん。姫宮家の第3プリンセスにふさわしい存在じゃん。母上、今しばらくのご辛抱です。私の手で姫宮の家門の尊厳を揺るぎなきものにします。きっとです!

「うへ。にへらあ・・・ふへへ♪」
「ちょっと、あんた、急に笑い出して大丈夫?今日はもう休んだほうがいいよ、マジで」
「なにを言ってるのよ。由納言美。自分の人生で、今が一番調子がいいんだから!」
「それは思い込みよ!心身ともに断食の悪い影響が出てきてるよ」

そして、知らせは唐突に訪れた!

「プリンセス! お嬢! 失礼いたします。生徒会役員のFaiうららさんからキャサリン様宛への信書が届きました!」
「信書? ずいぶん改まった手法ね」
「きっと、全役員辞任の報告だわ!私は勝ったのよ!!! 憂!パーティーの用意を始めなさい!姫宮家の威信にかけてみなにご馳走を振舞うのよ!」
「お嬢様、まずは中身を確認されたほうが・・・」
「ははは、見るまでもないわ!」
「ちょっと、あんた中身ぐらい読みなさいよ!ええ、もう、しょうがない私が読み上げるわ」
「よきにはからいなさい!」

思えば私の人生は辛苦の連続だった。姫宮家のために結果を出せない私を母上は疎んじられ、自立を促すとかいう名目で本家を追われ、郊外の屋敷で一人暮らしを強いられるという苦渋の日々。質素倹約の美名の下に、まるで囚人のような食事を姉上から強要されてきたわ。

「お嬢、本当に全役員辞任の報告ですか?」
「違う・・・誰一人辞任しないわ」

うん♪そうか、やはり全員辞任かぁ。今回の断食の成功で、姫宮家の中での私の地位は格段に上がるのは必定。母上の覚えめでたくなれば、姉上の監視下から私は解放されるのはもちろん、姫宮宗家の家督を継ぐように命じられるかもしれないわ!ふふ・・・傲慢な姉上の驚愕する顔が目に浮かぶわ!まさに下克上!

「お嬢、その、では、いじめ問題は私たち貴族に全権委任されるのでしょうか?」
「いえ、私たちに認められたのはいじめ調査権だけよ。懲罰権は一切与えないと明記されているわ」

姫宮宗家を継げば、私が自由にできるお金は無限大と言っても過言ではないわ。有り余る金を駆使して、まずは終身貴族院議長の地位を手に入れるわ。そのあと、福山家の家長に新貴族法案の可決、つまり平民でも国家に有意な功績ある者は貴族に取り立てる法案を可決させることを条件に、福山一門を姫宮家が掌握。軍需産業を姫宮家の支配下に置くわ!同時に、姉上を大蔵大臣に就任させ、この国の財政と金融を支配。軍隊とお金を掌握したら、いよいよ婿探し。

「うふふふふふううううううう。私、絶対もてるよ!お金と権力握ってるんだんからあ♪」

Comic13.jpg

「ちょっと、あんた!!何わけのわかんないこと言ってんの? 生徒会はあんたの要求を全部はねつけたわよ!!!」

「そんなに怒りなさんな! 由納言美!」
私はビシッと指を言美に向けて高らかに宣言した。
「姉上が大蔵大臣に就任したあかつきには、あなたを帝都一番の大金持ちにしてあげるんだから!あ、遠慮なんていいのよ。友人特典ってことでさあ。」

「ちょっと、あんた。ほんとに狂ったの?」

「それでもって、大型船を建造しようよ。あんたの故郷まで一足飛びに航海できる丈夫なやつをさあ。枢密学校の英知と姫宮家の財産があればきっと実現できるよ!」

「・・・・・・」

「そうなると、港もつくらなきゃね!やれやれ、大変だな。これは国家プロジェクトだよ」

「だめだ。意思の疎通ができない。」
「お嬢、プリンセスの消耗が加速化していますね。解決しないと、精神か肉体のどちらから完全に壊れてしまいますよ」
「そうねえ。憂さんはどう思う?」
「はい、このまま断食を継続するのは無理かと愚考いたします」

由納言美とその側近と憂が何かひそひそ話しているけど、今はそんなこと気にしている場合ではないわ。由納言美との癒着を強化し由納家との貿易を推進して、帝国に莫大な富をもたらすのよ。ありあまる富と強兵で千条家を威圧して、北国を我が国の経済的従属化に置こう。直接支配は、治安維持と教育と福祉にかかる費用を考えたら割に合わないもんね。ふふふ、姫宮家は、伝統的に地に足をつけた支配をするのよ。

はあはあはあ・・・さすがにエキサイトしてしまったわあ。今、私、人生の中で一番盛り上がってるよ。水・・・水飲んで落ち着こう!

「ぶふぁああああああああああ・・・・・」

「ちょ!?汚っ! あんた、何、水吐き出してんの?」
「憂!なんなのこの冷たいお水は!?断食で疲労しきった私の胃袋を痛みつける気なの!?」
「え!? お嬢様。私はぬるま湯を差し上げたはずですよ?」
「これのどこがぬるま湯よ!?」

私は、手に持ったガラスのコップを使えぬ侍女約一名に投擲した。ガラスのコップはドアに当たって粉々に砕け散った。ち、避けやがった。

「戦うヒーローを大事にしなきゃ、いいヒーローは生まれないのよ!」
「ちょっと、あんた!舌の感覚、おかしくなってんじゃないの?憂さんの入れたお水は人肌の温度よ」

「由納言美さんは黙ってていただけますかぁ?これは姫宮家の問題なんで!!」
私は、憂に向き合った。
「だいだい、あんた。ちょっと姉上や母上に気に入られてるからって、調子に乗ってんじゃないの!?」
「申し訳ございません。お嬢様。ですが、私そんなつもりは全然なくて・・・」
「はあ!?媚びてる自覚も無いとか、まじうざいんですけどォ」

「ちょっと、やめなさいよ。あんた。周りの子達もみんなびびっちゃってるじゃない」

由納言美が何か言ってるけど。完全無視だ。私には、侍女に教育を施す権利があるの。
「だいたい、あんたさあ。いつも私のことバカにしてるよね。」
「めっそうもございません!」
「あんたにとってはさあ、また性懲りもなく、アホがアホなことしてるよぎゃああはははっ、てかんじかもしんあいけどォ・・・」
「全然、そんなこと思っていません」
「庶民勢力の台頭著しい、この厳しいご時勢にィ、大貴族の娘として生を受け、その運命を全うし、その栄光を次世代に伝えていく使命を担うことがどれだけプレッシャーのかかることなのか、あなた想像したことある!?」
「いえ・・・それは・・・そのう。私には出すぎた想像です。あまりにも恐れ多いことで」
「言い訳しない! 私に関心が無いだけでしょうがっ!」
「そんなことはございません!私は、姫宮キャサリン様のご多幸と益々のご活躍を」
「私が欲しいのはそんなテンプレじゃないのよ!あなた自身の言葉なのよ!ごほっ!」
ちょっとむせた。あ、今のは病弱アピールじゃないよ?念のため。
断食が続いているせいでさすがの私も大声を出すと身体に障るわ。
「お嬢様!大丈夫ですかっ!?」

「大丈夫よ! あー、ちょっとカメラさん!今のシーン、カットでお願いよ!」
本当に断食しているのか、という疑念をもたれると致命的なので一応カメラさんには常に同行してもらっている。
で、私の24時間を動画投稿サイトにアップして、断食のアリバイ証明にしているのだ。
姫宮家の第三プリンセスがいじめという絶対悪に抗議し、正義の断食を決行する、というテーマは多くの人々の共感を
集め、動画再生数が10万人を突破したという。人気者になるのはいいが、ちょっとプレッシャーなのよね。
今みたいな間抜けなシーンまで撮られるとね。

「あー、でも。今日はちょっと疲れたわ。私は寝る! 私に関する案件は、千条さん、結納さん、衣川さんの3人の合議で決定して頂戴!何か大きなトラブルが発生したら憂を通じて報告に来なさい。以上、姫宮派閥の定例会議を終了します!」
私は由納言美その他の派閥メンバーに向って最大限の威厳をもって訓示した。

「だから、そんな派閥は無いんだって!」

・・・



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プロフィール

Catherinefx

Author:Catherinefx
ブラックあずにゃんさんのTwitterによる寄稿のライトノベルです。
絵:きゃさりん

とある乙女の裁量決済(ロスカット)
http://catherine2010.blog119.fc2.com/

もともとは上記ブログで紹介させていただいていたのですが、最新記事から降順では読みづらいため、こちらに読みやすくまとめてみました。

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