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出口戦略

「もうーーーー! 一体誰なの!? 自分の気に入らないルールを変えてくれなきゃ、死ぬまで断食してやる、とかマジキチなことをはじめた女は!!」
「姫宮だ、姫宮キャサリン様だ・・・」
「っつ! またあの女はめんどくさい事をはじめたわね」
「つかさ、いじめ問題の根本原因はさ、本来枢密に入学するような能力を持たない生徒なのに、貴族だからって言う理由だけで入学できちゃうことにあるわけでしょ?」
「まったくだわ。今回の問題の本質は身分差別にあるってどうして分からないのかしらね」
「わからなくて当然だわ!貴族は何もしなくてもEstablishment(権力者層)だと未だに思い込んでるんだから」
「時代錯誤もはなはだしい。姫宮家がどうのこうのなんて言ってるような時代じゃないのにねー」

Comic_01.jpg

「話はちょっと変るけどさ、今回の事案で一番ありえないのは福山執行部だよね」
「あの女、マジうぜえ。庶民勢力の代表者を気取りながら、貴族の肩を持つような対応を連発するし」
「私の友人もいじめに加担したとかで、厳重注意を受けたわ。」
「それヤバクネ? 履歴に傷がつくと出世に差しさわりが出るよ?」
「まあね。ひどい話だよ。あの執行部は早く倒すべきよ。うちらの将来が危ないわ!」
「福山さんは、というか福山家は庶民を代表するポーズをとりながら裏では姫宮家と癒着してるもんねー」
「だね、福山さんの政治信条は庶民勢力の利害を代表することじゃないよ」
「じゃあ、なんなの?」

「きっとこうだよ。My lady きゃさりん様! なんでも従いまーーーーす!!!」

「「「ぎゃっはははははははh!!!! それマジ受ける!!!!」」」

・・・
・・・ ・・・
・・・ ・・・ ・・・

「なんということなの。これは!」
枢密学校の事実上の最高権力者である福山みゆきさんは机を激しくたたいて敵意を隠そうともしない。
腹心の部下から提出された盗聴器からの音声が、どうやらいささか以上にお気に召さなかったらしい。

あ・・・どうも。Faiうららです。

「お姉ちゃん。大きな声出したらだめだよ。人に聞かれちゃう」
おずおずと進言するのは、みゆきさんの妹の福山あいり。 彼女は生徒会長だが、フィギュアヘッド、すなわち名目上のリーダーに過ぎない。

「ぐぬぬぬぬぬぬぬぬ・・・・」
印象管理はとても大事だ。いくら立派な政策を練り上げても、感情的な人物には票は集まらない。
一位当選者ともなれば、次の確実な勝利のためにも、無駄に感情をむき出しにするのはご法度だ。
だから、みゆきさんは我慢した。

ナイスアシスト! 福山あいりちゃん
本音を言うと、
もう私、疲れ切っていて、これ以上みゆきさんの情緒不安定に付き合いたくないのよね。

「あいり!盗聴器の声の人物を特定して!あと、彼女たちの履歴も調べて報告するように!!」
「うん分かった。すぐに手配するね」

「だいたい・・・」
いったん怒りを抑えても、やはりある程度のガス抜きは必要なのだろう。
みゆきさんの憤りはまだ彼女の体の中でくすぶっている。
めんどくさい時局を早期に終結させるためにも、ここは聞き役に徹したほうがよさそうだ。

やれやれ、まったく気を使う。私の本分は研究。何でもや屋じゃないんだけどなあ。
「誰のおかげで、朝食と昼食が無料で提供されるようになったのよ!」

ああ・・・そうきたか。確かに、みゆきさんが低能力者層のベーシックインカムを半減したおかげで、それを一部原資にして
朝食・昼食の無料化が実現されたのだった。
「派閥の要望には応えてるじゃない。なのに、なぜ反抗するの」
「みゆきさん。彼女たちは感謝していると思いますよ。ただ・・・」
「ただ・・・?」
「枢密学校の生徒は日夜厳しい不安と闘っています。研究結果を出せなければいつ一番下に落とされるかもわからないので。しかも、そうやってやっとの思いで今の地位を築いても、貴族の子女ほどの待遇など望むべくもありません」

だから、貴族に腹が立つ。能力も無い。努力もしない。なのに待遇は格段によい。貴族であれば誰でも入学できるし、高給取りになってしまう。

「Faiさん。確かにそこだけ切り取ればあなたの言うことが正しいわ、でもね」
みゆきさんはいすに深く腰かけ、天を見上げた。
「貴族は戦闘を担うわ。先の北方征伐でもたくさんの貴族が亡くなった。国のために命を捧げる者には格別な高配が与えられてしかるべきなのよ」

魔法が使える貴族は戦争では絶対に必要な存在。
戦争は命のやり取り。

私たちの平和と安全のために闘う貴族に特権を与えるのは当然。

そういう理屈だ。

庶民は努力し、富を蓄積し、貴族に負けない担税能力を身につけた。その結果、貴族の特権は掘り崩され、私たちは政治にも口出しできるようにはなった。

でも、まだ不十分。本当に庶民が貴族と伍するには、庶民も戦闘業務を担わなければならない。
税金を納めるだけではなく、命をかけて国のために闘う意思と能力を持たなければならない。

それができないのなら、庶民は永遠に貴族の下だ。

「たしかに。ですが、時代は動いています。私の魔法銃の性能がアップし、大量生産が可能になれば、戦闘では無能力だった庶民も貴族にも負けない仕事ができるようになるんですよ」

電撃娘だろうが、テレポートだろうが、どんなチートじみた能力者が相手でも、私の魔法銃は絶対に撃ち抜く!

「魔法銃はただの武器じゃありません!身分社会を矯正する、いわば平等の象徴なんです」
「素敵な話ねえ! そんな武器が本当に出来上がれば、軍需産業で稼いでいる私たち福山グループも末代まで遊んで暮らせるだけのお金が稼げるでしょうねえ」

私の高邁な理想を、みゆきさんは身内の安泰に置き換えてしまった。

「誤解しないでちょうだいね。Faiさんの理想も私も一部共有するよ。だけど、なんていったらいいんだろうな・・・」
みゆきさんは、深く考え込んでいる。
「私は魔法銃で能力者と互角になるというのは懐疑的だわ。銃は直線的にしか進まないけど、能力者の魔法は自由自在に方向転換できるし」

魔法銃は直線しか支配できない。確かに大きな欠点だ。

「確かに、でも」
「それに、そういう技術的な欠点を無視しても、無理だよ。」
そこは戦術でカバーすればいい、と続けたかった。でもできなかった。
「だって、貴族は代々受け継がれた教育で命を掛けて闘うことに躊躇いを感じないから。命を散らすことを美学とさえ考えるから。残念ながら、そういう覚悟は、庶民には無いよ。というか無理なの。そういう覚悟は、親のまなざし、態度、振る舞い、言動で代々受け継がれるものだから」

Comic_02.jpg

「・・・」
私の魔法銃で、一定の戦う「能力」は身に付いても、戦う「意思」は身に付かない。
みゆきさんは、魔法銃を評価しつつも、限界があると看破したのだ。

「知ってのとおり、主だった貴族たちは、北の前線に張り付いて動けない状態が続いているわ。そのおかげで枢密に占める貴族の割合が極端に少なくなり、かつ構成がいびつになっている」
私の沈黙をどうとらえたのか、みゆきさんは話題を転換した。
「はい。本来であれば、貴族系学生は40人から60人増えてもおかしくありません。しかも、今の貴族はほとんど結納言美様の側近ばかりです」

結納言美様は他国の姫君。その側近である由納九連枝は、由納宗家を支える貴族たちだ。従って、北方征伐に参加する義理は無い。

「そう、平時であれば、貴族の数はもっと多く、しかも姫宮きゃさりん様が盟主になってもおかしくないのよね」
「つまり、今きゃさりん様が断食というような非常な手段をとるのは自分の影響力の低下を防ぐため、とも考えられると?」
「いくぶんはそれが動機だろうね。もっとも、姫宮家は他の家族が優秀だから、第3プリンセスまで身体を張る必要は無いと思うけど。まあ、きゃさりん様なりの意地があるのでしょう」

みゆきさんはなおも話を続ける

「貴族と庶民のなかに断絶がある。庶民の中でも、親貴族派と反貴族派の断絶がある。また、あなたや菫さんのように、経済力だけでなく軍事力をもたないと貴族とは対等になれないと主張するグループもある。努力しても落ちこぼれる庶民もいる」

枢密は現代社会の縮図だといいたいのだろうか。
「いろいろながグループがあって、その間の断絶は深海のように深く、しかもその断絶の数は複数ある」
「はい。では、私たちはどうすればよいのでしょうか。みゆきさん」
「まずは、断絶を修復すること。各派閥間の利害を調整し、それぞれが渋い顔をしながらも『このくらいなら、まあ妥協してもいいか』とうなずき合えるような一点を見つけ出すの」

そんな一点が存在するのだろうか。幻の一点ではないだろうか。

「ま、まずは目の前の問題に集中しましょう」
「そ、そうですね。みゆきさん」
「先の盗聴器からの音声でも明らかなように、対貴族強硬派の中で私に対する不満が高まっているのは間違いないわね」
「そうですね。追加予算の申請を彼女たちに優先的に認めることで慰撫してはいかがでしょう?」
「うん・・・。そうね。一時的には一定の効果はあると思うけど」
「お姉ちゃん。あいりは反対です。対貴族協調派の間に不公平感が発生する可能性があるよ」
「そうだよね。そうでなくても、あの子達はちょっと甘やかしすぎたと思うし。これ以上の増長は阻止したいところね」
「そうですか・・・。となるとやはり問題の本質に真正面から向き合うべきでしょうか」
「それが王道でしょうね」
「あいりもそう思います。臨時派閥総会を開いて、執行部としていじめ問題にどう取り組むべきかを提案して、派閥としての意思を決定するのがよいと思います」
「割れるだろうな・・・。Faiさん、きゃさりんお嬢様が納得するようないじめ対策を私たちが提案したとして、派閥の過半数は賛成してくれる見通しはあるかな?」
「過半数は問題ないと思います。対貴族協調派は、貴族との協力なしでは研究ができません。、また、対貴族強硬派でも、みゆきさんに面と向かって歯向かう者は多くて7割程度でしょう」
「それでも、かなりの数になるわね・・・。執行部の求心力低下は避けられないか」
「そうですね・・・みゆきさん。あいりはどう思う?」
「求心力低下を受け入れても解決すべきだと思います。この問題が長引いて、きゃさりんお嬢様の健康状態が悪化すれば、もっと厄介な問題になっちゃうとおもうし」
「確かに・・・あいりの言うとおりだわ」
「そんなにまずいのですか?みゆきさん」
「竜宮皇帝家は、姫宮家を扶養する義務があるのよ。つまり、法律を厳密に解釈すれば、姫宮の娘を傷つけることは皇帝一家を傷つけることと同義なのよ」
「それって、つまり・・・えっと」

まずい・・・いやな汗が背中を流れた。
「私たちの対応の不備で、きゃさりんさまに万一のことがあれば、私たちは大逆罪に問われる可能性があるのよ」
重大な秘密を打ち明けるようにみゆきさんは言った。
いや・・・本当に重大だけど・・・
って・・・大逆罪!

「たっ・・・たたたたた・・・大逆罪ってあれですか!?拷問つきの処刑ですよね!?」
「そうだよ・・・。もっとも、それは法律を厳格に解釈した場合の最悪のケースだけど。私たちは、最悪のケースを想定しながら動いたほうがいいわ」
「結果的にうまくいかなかったとしても、最善を尽くしました、というアリバイ・・・というか言い訳を今のうちにコツコツ積み上げたほうがいいと思うよ。お姉ちゃん」
「派閥総会。今すぐ開催しましょう。みゆきさん!」

「落ち着きなさい!二人とも」
みゆきさんは、臆病風に吹かれる私たちを叱責した。

「派閥総会開催のカードを切るタイミングは私が判断します」
「出すぎたまねをして申し訳ございませんでした」
私は謝った。でも、恐怖心は拭えない。拷問つきの処刑かあ・・・怖いだろうな。

「派閥総会の開催は、対貴族強行派と縁を切るに等しいカード。まずは、切り崩し工作行わないといけないわ。ひとりでも多くの子を対貴族強硬派から脱落させるの。それから、減った分の頭数をどう補填するのかも考えないと」

「補填のあてはあるのですか?みゆきさん」
「あるよ」
「それは・・・?」
「貴族。貴族と手をくむわ」

Comic_03.jpg

「正気ですか!?みゆきさん!」
「お姉ちゃん!それはまずいよ!!」

「私の話を聞きなさい、二人とも」
私は押し黙った。いや黙ってる場合じゃない。

「みゆきさん!貴族はたったの13人。対貴族強硬派は約90人です。仮に切り崩し工作が奏功して、半分を慰留したとしても割に合いません!」
「お姉ちゃん!貴族と手を組むとなると、切り崩し工作自体が不発に終わるかもしれないよ!対貴族強硬派は貴族と組むことを嫌がるもの!」
「だから話を聞きなさい!」

みゆきさんは、ぴしゃりと私たちの反論をシャットアウトした。

・・・



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プロフィール

Catherinefx

Author:Catherinefx
ブラックあずにゃんさんのTwitterによる寄稿のライトノベルです。
絵:きゃさりん

とある乙女の裁量決済(ロスカット)
http://catherine2010.blog119.fc2.com/

もともとは上記ブログで紹介させていただいていたのですが、最新記事から降順では読みづらいため、こちらに読みやすくまとめてみました。

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