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誤発注事件

「八時になりました。ニュースお伝えします。
今日、午後二時ごろ、姫宮家第三プリンセスの姫宮きゃさりん殿下のお屋敷に、大量の棺おけが運び込まれるというショッキングな出来事がありました。その数は、姫宮家の戦闘員の数とほぼ匹敵する1万個に達するともいわれています。姫宮家では、次の北方征伐の開戦の是非をめぐって、連日一門会議が開催されており、今回のきゃさりん殿下の行動を受けて、姫宮一門に大きな動揺が広がっている模様です。 」

私の名は姫宮きゃさりん。かわいくて頭のいい、誰からも好かれる女の子よ。ちなみに、お金と権力と権威ももっているの。まさにこの世の Establishment(支配者層)なのよ。

ま、そんな今さら過ぎる自己紹介はいいんだけどさ、今、テレビつけたら気になるニュースに遭遇したね。なんだろうね。
棺おけ1万個とか、アホが極まってるな。どこのお貴族様だよ・・・。

「今日は、姫宮一門の動向に詳しい専門家でいらっしゃるYさんにお越しくださいました。Yさん、大変ショッキングな出来事ですね」

「ええ、私も貴族の行動文化を研究して久しいですが、今回のような行動は初めて見聞きしました」

「きゃさりん殿下は、今回大量の棺おけを発注し、しかもその数は姫宮家の戦闘員の数とぴたりと符合します。きゃさりん殿下の狙いは何だと思いますか?」

「はい。これは極めて高度な政治的な駆け引きだと思いました。姫宮家では、停滞が続いている北部戦線にてこ入れを計るために私兵を投入する是非を巡って、連日一門会議が開催されています。しかし、姫宮執行部は、兵力の増強には極めて後ろ向きな姿勢を維持していました。その執行部の姿勢を強く牽制をするために、きゃさりん殿下は今回の措置に踏み切ったと考えられますね」

いや、意味分かんないし。その・・・なんなんの、その姫宮何たらとかいう人の狙いは?

「そうですか。ではそもそも何故、姫宮執行部は、兵力の増強に慎重な姿勢を維持しているのでしょうか?」
「姫宮家の軍事的負担が、すでに限界になっているからです。姫宮家の動員能力はおよそ一万。すでに第二プリンセスの姫宮一姫殿下は、7000の兵とともに北部戦線に張り付いています」
「なるほど。しかし、残りの3000人を増派することはできますよね?」
「確かにできます。しかし、3000の兵は、いわゆる北面の魔術師といわれる姫宮家の最精鋭部隊。これを全て派遣してしまうと、姫宮家は帝都で丸裸になってしまうのです」

ふうん・・・そうなんだ・・・へえ。

「加えて、北面の魔術師たちは、帝都の治安を維持する警察官としての機能も果たしているので、これを動員してしまうと、帝都の市民生活も麻痺する恐れがあります。つまり、姫宮家の自己防衛と市民生活を護るために、北面の魔術師を動かすわけにはいかない事情があるのですね」

「なるほど。姫宮家の防衛と市民生活の安泰を考えると、これ以上の兵力の増強は、姫宮家としては避けたいわけですね」
「はい。しかし一方で、姫宮家の増派を強く願う勢力も存在します。国民の間では姫宮家の増派を強く望む声が根強くあります。これは、戦争の過熱化が経済を強く刺激し、結果として国民生活が大きく向上するという思惑があるからです。また、姫宮一姫殿下をはじめ、北部戦線に張り付いている将軍たちは、膠着する北部戦線を打開するために、北面の魔術師の一刻も早い派遣を強く要請しているのですね」

「なるほど、それできゃさりん殿下は今回の奇行・・・失礼しました、えっと英断をされたわけですね」

それでって何?今の説明で、どうして棺おけ一万個の発注と結びつくのさ?しかも、今、奇行とか言ったよね?

「はい。おそらく、これは推測ですが、国民の強い要望と実の姉の強い要望に応えるために、きゃさりん殿下は、姫宮家臣団は全員死ぬ覚悟で戦場に向かうという覚悟を、一万個の棺おけ発注という極めて明快な行動で示して見せたと思われます」

知らないよそんなの!? 勝手に人の気持ちを忖度しないでよ!

現実逃避したい私の気持ちとは関係なく、事態はどんどん悪い方向に進展していく。やきもきしている最中に、嫌な効果音とともにニュース速報のテロップが流された。私、ニュース速報のときに流れる効果音って嫌いなのよね。あれを聞くと、不安で胸がざわつくんだもの。もっとさあ、さわやかな高原でそよ風がさあーっと美少女の柔肌をなでるような効果音にしてほしいよ。

ニュース速報
「姫宮家第一プリンセス、姫宮姫子殿下、きゃさりん殿下の棺おけ一万個発注事案に、姫宮家として関知せずと発言」

ちょっw マジうけるんですけど! 国営放送のニュース速報で、実の姉から心理的プレッシャーをかけられるとか、世界広しといえどもわたしくらいだよねー。まあ、それだけ私が大物になったってことだと思えば、悪い気はしないかな。
はっはっはっ!

Comic_17.jpg

・・・いやいやいや・・・まてまてまて・・・。

そろそろ真面目に考えないと、しゃれになってないぞこの事態。いや、ほんと、マジで記憶にないんだけど。
白昼夢にでも罹って棺おけ一万個発注しちゃったかな?だとしたら、やばいレベルで私の精神は狂ってるよ。

ドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッvドッドッドッドッ
心臓が早鐘のように打ち鳴らされる。

ちょっと、落ち着いて最近の記憶を整理しよう。
はーはーすーすー。大丈夫、大丈夫、深呼吸、深呼吸。

私の心は一気に不安定になるが、事態は一向に安定する気配がない。

「あ、今中継が入りました。Xさん?伝えてください!」
「はい、こちら、姫宮優子貴族院議長のお屋敷前です!たった今、姫子殿下がお屋敷から出てきたところです!姫子様!姫子様!」

獲物を見つけた飢えたハイエナのように、姉上に群がる報道陣。怒声が飛び交い、緊迫した状況を映像は伝えている。

「下がれ!下がれ!姫子様はなにも語らぬわ!」
姉上の取り巻き・・・っていうか北面の魔術師数名は、姉上を中心に円陣を作りながら、報道陣の雲海の中を分け入っていく。
「姫子様!一言!一言だけ、お願いします! きゃさりん殿下の棺おけ一万個発注の件について、率直にどう思われますか?」
「ああ、よい。立ち止まろう!」
姉上は、立ち止まり、露払い役の護衛たちに、自分はインタビューに応じる意思を伝えたようだ。

なんだ。結構余裕あるじゃん。姉上。そんなに怒ってなさそうだよ。

「今回の件について、姫宮家として事実関係を確認していないので、コメントは差し控えさせてください」
「しかし!姫子様! 多数の住人たちが、棺おけがきゃさりん様のお屋敷に運び込まれるのを目撃していますが」
「そうですか。しかし、何かの間違えかもしれませんし、とにかく事実関係を把握しないことには何もコメントできません」

おおう!姉上、ちょーれいせい!!! 大丈夫大丈夫!姉上、絶対怒ってないって。

「一部報道によりますと、きゃさりん様は、姫宮執行部の方針に猛然と抗議するために、今回の措置に踏み切ったともいわれておりますが」
「仮定のことには、お答えできません・・・が、一般論としていえば、二つ申し上げなければなりません。姫宮一門の構成員は、執行部の方針に従う義務があること。そして、プリンセスの立場になれば、より真剣な従属が求められる、ということですわ」

にこやかな笑顔で答える姉上。でも、この発言絶対、テレビの前にいる私を想定した、私宛の発言だよ。
やっべえ・・・すっごい怒ってるぞ、これ。

どうしよう・・・。記憶を整理してみたけど、棺おけのかの字も出てこなかった。当たり前だ。そんなものを発注する動機がない。
ということは・・・?誰かにはめられたか?例えば、催眠の魔法を知らず知らずのうちに掛けられて、私の意志とは関係なく発注してしまったとか?

いやまてまて・・・その仮定が正しいとして
①誰がそんなことをした?
②そもそもそんな能力のある魔法使いは誰だ?

で絞り込んでいくと、容疑者は絞り込めていくような気がする。
①については、戦争の進展を望む勢力だ。例えば、戦争で莫大な利益を得られる、軍需産業関係者(福山家)
あるいは、北部戦線でこう着状態に陥って増派を願う姉上(姫宮一姫)の陣営か

②については、高位能力者しかいないだろう。私だって高位能力者なんだから。対魔法の属性を持っているんだから。

・・・
ふむ・・・

なるほど、だいぶ容疑者が絞り込めてきたような気がする。本件を引き起こす、動機と能力を兼ね備えた人物は、姉上(次女=一姫)しかいない・・・。

Comic_18.jpg

あの死神プリンセス(姫宮一姫)めっ!

いや、あのね。もちろん憶測だよ?断定しているわけじゃないよ?
だけど、容疑者をある程度特定して戦術を組み立てていかないと、対応が後手に回るじゃん?

沈思黙考。

さて、どうしよう。どうするのが正解だ。しっかりと現実を曇りなき眼で見つめ、最善手を打たないと。
クールになれ。姫宮きゃさりん。あなたなら絶対にこのピンチを切り抜けられる!

精神を落ち着けて、次の一手を思考していたら、またもや不穏な効果音とともにニュース速報のテロップが流れた。

ニュース速報
「姫宮きゃさりん殿下。姫宮家は挙藩出兵に踏み切るべき、と声明を発表」

たった今、姫宮きゃさりん様から各社マスコミ宛にファックスが届きました!
それによりますと、
「我が姫宮家には、出兵を忌避するような臆病者は一人もいない。
北面の魔術師たちは、全軍すみやかに軍備を整え戦地へ向かうべき、
と書かれています。

挙藩出兵。つまりお家の私兵を全て動員しなさいってことだね♪
何様だろうね?この姫宮きゃさりんとかいう人は。
あたし、しりませんこんなヒト。だって、わたし、どこにでもいる、ちょっとあたまのよいふつうのおんなのこだもん。
ぐんじとかせいじとかがいこうとか、ぜんぜんかんけいないせかいのごくふつうのかていのおんなのこだもん。
あしたはままといっしょにゆうえんちにつれてってもらえるんだ。

たのしみだな。

どどどどどどd・・・っと足音が聞こえるよ。ドアの外で……
なんだろう?

ぱあんっつたたきつけられるような音がしてドアが開いたよ

「ちょっと!あんた!! 今ニュース速報流れたんだけど、あれマジっ!?」
「たっくん!?」
お部屋の光の中へ、闇の中から颯爽と現れる私のナイト。
たっくんとはたくやくんのこと。幼少の頃より私に仕えし漆黒の騎士。
だが、私に対する恋の苦悩に絡めとらわれ、自ら姿を消してしまったあわれな少年!
ああ、なんていじらしい!

「はっ?なにいってんのあんた。いや、そんなことより、あんた本家に挙兵をうながすつもりなの!どうなの!?もし、そのつもりなら、本国政府に報告しないといけないんだけど!」

「たっくん!うれしい!私を迎えに来てくれたのね!」
たっくんの目は、燃え上がるように真剣だ。これこそ、私に対する恋の苦悩の証左!

「わけわかんないこといってないで、さっさとあんたの了見を教えなさいよ!挙兵推しなの?違うの? 結納公国の外交戦略が変わってしまうかもしれないから、はっきりしてほしいんだけど!」

たっくんは、己の劣情を抑えきれずに私にのしかかってきた!
ああ、乙女の危機!

「だめよ、たっくん! 男の子だから、己の欲望を抑えきれないのは無理ないとは思うけど、婚前交渉が許されるような立場ではないでしょう?お互い!」

「ちょっといい加減に正気に戻りなさいよ!」






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プロフィール

Catherinefx

Author:Catherinefx
ブラックあずにゃんさんのTwitterによる寄稿のライトノベルです。
絵:きゃさりん

とある乙女の裁量決済(ロスカット)
http://catherine2010.blog119.fc2.com/

もともとは上記ブログで紹介させていただいていたのですが、最新記事から降順では読みづらいため、こちらに読みやすくまとめてみました。

最新記事も上記ブログで読むことができます。

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